PHILIPPINES STARTUP

S&P、フィリピンはすでにスタグフレーションの状態と指摘、年内の利下げはないと予想

KEY POINTS

ニュースの要点
格付け会社S&P Global Ratingsのシニアエコノミストが11月6日のウェビナーで、フィリピンは成長が長期トレンドを大きく下回り、物価も高い「スタグフレーション」の状態にあると述べました。2026年の成長率予想は2.9%、2027年は5.4%です。
この動きの意味
格付け会社が「スタグフレーションに入っている」と明言したことで、景気の弱さと物価高が一時的なものではないという見方が強まります。S&Pは消費の弱さが2027年前半に表れ、高い金利がその時期まで続くと見ており、フィリピンの消費市場を狙う企業にとっては来年前半まで逆風が続くことになります。
今後の注目点
11月9日に7〜9月のGDPが発表されます。BusinessWorldが集計したアナリスト16人の予想の中央値は2.7%です。12月17日の中央銀行の金融政策会合で、利上げが続くか止まるかも判断材料になります。

格付け会社のS&P Global Ratingsは11月6日のウェビナーで、フィリピン経済がスタグフレーション(景気の停滞と物価高が同時に起きる状態)にあるとの見方を示しました。

シニアエコノミストのVishrut Rana氏は、「スタグフレーションを、成長がトレンドを大きく下回り、かつ物価が高い状態と考えるなら、いまはまさにその状態だ」と述べています。PhilSTARによると、フィリピンの長期的な成長トレンドは5.5〜6%で、足元の成長はそれを大きく下回っています。

成長は3%に届かず、物価は7.8%

指標足元S&Pの予想
実質GDP成長率4〜6月 2.4%2026年 2.9%、2027年 5.4%
物価上昇率10月 7.8%(1〜10月平均5.6%)2026年 5.5%、2027年 3.6%(9月時点)
政策金利5.5%年内の利下げなし

4〜6月のGDP成長率は、統計庁が速報の2.3%から2.4%に上方修正しました。それでも上半期の平均は2.6%で、政府の通年目標3.5〜4.5%を下回っています。10月の物価上昇率は7.8%で、中央銀行の目標(2〜4%)を8か月続けて上回りました。

Rana氏は減速の理由として、公共支出の落ち込みによる建設・不動産の弱さと、燃料と食品の値上がりで家計の需要が冷えていることを挙げています。物価高はおもに供給側の要因で、中東の紛争による世界的なエネルギー高と、強いエルニーニョ(太平洋の海水温が上がり、フィリピンでは干ばつを招きやすい現象)による食品の値上がりが続いているとしました。

消費の弱さは2027年前半に表れる

S&Pは、食品価格がさらに上がって家計の所得を圧迫すると見ています。東南アジア諸国の協調でコメなどの供給は確保され、食品価格が急騰するとは見ていないものの、いまの約7%よりは高くなるとしました。

Rana氏は「消費需要の弱さは2027年前半に表れ、金融引き締めも同じ時期まで続く」と述べています。

中央銀行は10月に予想外の0.5ポイントの利上げで政策金利を5.5%とし、4月からの引き上げ幅は計1.25ポイントになりました。S&Pは年内の利下げはないと見る一方、物価高の大部分は供給側の要因で次第に和らぐため、大幅な追加利上げの必要は小さいとしています。

原油は1バレル105ドル、銀行の不良債権も増える

PhilSTARによると、S&Pは新しい原油価格の前提として、北海ブレントを2026年の残りは1バレル105ドル、2027年は85ドルと置きました。燃料を輸入に頼るフィリピンには圧力が続きます。

銀行にも影響が出るとみています。S&Pのディレクターは、銀行の不良債権比率(返済が滞っている融資の割合)がいまの3.1〜3.2%程度から年末には3.5%に、2027年には3.5〜4%に上がる可能性があると述べました。ただし利益と資本の厚みがあるため、銀行は持ちこたえるとの見方です。

来週のGDPと12月の金融政策会合

7〜9月のGDPは11月9日に発表されます。BusinessWorldが集計したアナリスト16人の予想の中央値は2.7%です。中央銀行のRemolona総裁は、7〜9月のGDPで需要不足がさらに大きいと分かれば、追加利上げの可能性は下がると述べています。年内最後の金融政策会合は12月17日です。

原油価格はドル建ての前提値のため、円換算はしていません。

SOURCES / 出典

  1. BusinessWorldメディア
    Philippines faces stagflation threat, says S&Pbworldonline.com
  2. PhilSTARメディア
    S&P warns of stagflation as Philippines growth faltersphilstar.com

参考(本文の補足)

  1. PhilSTARPhilippines Q2 GDP revised to 2.4%

SHARE

#S&P#スタグフレーション#GDP#物価#金融政策#マクロ経済

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS
トレンド

フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場

フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。

市場分析

フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】

PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。