新車販売が10%減るなか、電動車だけが2.4倍に伸びている
KEY POINTS
- ニュースの要点
- 調査会社BMIはフィリピンの2026年の自動車生産を12万7,453台と、前年の13万9,606台から8.7%減ると予測しました。1〜7月の新車販売も24万1,725台で10.2%減っています。一方で電気自動車・ハイブリッド・プラグインハイブリッドの販売は3万8,286台と136.4%増えました。
- この動きの意味
- 市場全体が縮むなかで電動車だけが伸びており、需要の中身が入れ替わっています。生産側の重荷はペソ安による輸入部品のコスト増で、しかも高い金利と家計の購買力の弱さから価格に転嫁しきれない状態にあります。
- 今後の注目点
- RACE制度の中身がいつ固まるか。2027年に生産が13万8,452台へ戻るか。電動車の伸びが二桁台に落ち着くか。ペソが下げ止まるか。
フィリピンの自動車市場で、全体が縮みながら一部だけが急に伸びるという状態が起きています。
調査会社BMI(Fitch Solutions系)の予測と実績を並べます。
| 台数 | 前年比 | |
|---|---|---|
| 2026年の生産見通し | 12万7,453台 | -8.7% |
| うち乗用車 | 5万8,157台 | -9.3% |
| うち商用車 | 6万9,296台 | -8.2% |
| 1〜7月の新車販売 | 24万1,725台 | -10.2% |
| うち電動車(EV・ハイブリッド・PHEV) | 3万8,286台 | +136.4% |
2025年の生産は13万9,606台でした。電動車の前年同期は1万6,195台ですから、1年で2.4倍になっています。
生産が減る理由は、通貨にある
BMIが挙げた重荷は ペソ安です。
ペソは9月4日に1ドル62.59ペソの史上最安値をつけました。フィリピンの自動車生産は輸入部品に依存しているため、ペソが下がるほど原価が上がります。
厄介なのは、その上昇分を値段に乗せきれないことです。BMIはこう指摘しています。高い借入コストと弱まった家計の購買力が、すでに車の買いやすさを狭めている。だから製造業者はコストの増加を消費者に完全には転嫁できない。
つまり、原価は上がるのに売値は上げられないという板挟みです。生産を減らす判断は、そこから出てきます。
拠点になる道も、平坦ではない
同社はもうひとつ、長期の見立ても出しています。フィリピンが 地域の自動車生産拠点になる道は険しい、というものです。
理由として挙げたのは次の点です。
- 部品を供給する現地の企業網が弱い
- 輸送とエネルギーのインフラが安定しない
- 政策が揺れている
3つめは具体的な出来事を指しています。政府は1月に自動車産業の振興制度(CARS)への予算を一度は拒否し、その後に復活させました。後継のRACE制度も内容が固まっていません。BMIは、この一連の動きが 世界の自動車メーカーに生産を他の東南アジア市場へ移させた可能性があるとしています。
「製造業者には長期の見通しが要る。新しい車種、金型、組立能力についての判断は、多額の初期費用と長い計画期間を伴うからだ」
すでにタイとインドネシアが電動車の生産で先行しており、フィリピンは供給網への投資を呼び込む点で後れを取っている、というのが同社の評価です。
それでも電動車は伸びている
ここに矛盾があります。生産の拠点にはなれていないのに、売れている電動車は2.4倍です。
答えは単純で、多くが輸入されているからです。電気自動車とハイブリッド車の輸入関税はゼロで、その期限は2028年。業界団体は2040年までの延長を求めています。
関税ゼロは普及を速めますが、国内で作る理由は増やしません。BMIが指摘する「拠点になれない」構図と、電動車が伸びる構図は、同じ制度の裏表にあたります。
BMIは2027年に生産が13万8,452台へ8.6%戻り、2030年に17万6,898台、2035年に23万3,103台になると見ています。回復を見込んではいますが、そこに至る条件として挙げているのは、一貫した長期の政策支援と、より信頼できるインフラです。
SOURCES / 出典
- BusinessMirrorメディアReport: PHL vehicle output may fall due to weak pesobusinessmirror.com.ph
- Philippine Daily InquirerメディアPH faces bumpy road to becoming auto hub–BMIbusiness.inquirer.net
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