PHILIPPINES STARTUP

EV業界が優遇措置の2040年までの延長を要望、対象にハイブリッドも

KEY POINTS

ニュースの要点
フィリピン電気自動車協会が、電動車の優遇措置を2040年まで延長するよう求めた。輸入関税をゼロにする大統領令62号は2028年、EV産業振興法にもとづく非課税以外の優遇は2030年が期限である。対象には電気自動車のほかハイブリッド車とプラグインハイブリッド車が含まれる。
この動きの意味
ハイブリッド車が対象に入っている点が実務上大きい。充電できる場所が首都圏に偏るあいだ、外部充電を必要としないハイブリッドが移行期の主役になりうる。エネルギー省も7月に2040年までの継続を提案する方針を示している。
今後の注目点
上院法案2270号が成立するか。大統領令62号の期限が延びるか。地方自治体ごとに違う充電設備の許認可が揃うか。政府目標の分母(新車販売か保有台数か)が整理されるか。

フィリピン電気自動車協会(EVAP)が、電動車の優遇措置を 2040年まで延長するよう求めている。

いま期限が切られているのは2つある。

制度内容期限
大統領令62号輸入関税をゼロにする2028年
EV産業振興法(EVIDA、共和国法11697号)優先的な登録手続き、ナンバー規制の適用除外など2030年

関税ゼロの対象は、電気自動車(バッテリー式)だけではない。ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車、それに一部の部品も含まれる。

EVAPのCarla Buencamino副会長は「この優遇措置は本当に維持する必要がある。我々の目標は、2040年まで続くエネルギー省の目標と同じ高さにあるからだ」と述べています。

ハイブリッドが入っていることの意味

実務上いちばん効くのは、ハイブリッド車が対象に含まれている点である。

完全な電気自動車は、充電できる場所がなければ売れない。フィリピンの充電インフラはアヤラ系の ACMobility が牽引しており、7月時点で公共の充電器を500基超、これは エネルギー省に登録された充電設備の45%超にあたる(電池交換方式を除く)。1社で半分近くを占めているということは、裏を返せば 市場全体がまだ小さいということでもある。

しかも設置は首都圏周辺に約7割が集中している。地方では充電の当てがない。

その制約を受けにくいのがハイブリッド車である。外部から充電せずに走れるため、インフラが整う前でも成立する。関税ゼロがハイブリッドまで及ぶかどうかは、この移行期の販売に直接効く。

立法と行政の側でも動いている

上院では、上院議長のSherwin T. Gatchalian氏が 上院法案2270号を提出している。EV産業振興法にもとづく優遇の有効期間を 8年から12年へ延ばし、電動車と関連設備の輸入関税をなくす内容である。

エネルギー省も7月の時点で、大統領の長期目標を支えるために優遇措置を2040年まで続ける案を出す方針を示していた。業界の要望と役所の方針は、いまのところ同じ向きを向いている。

現場側の障害としてBuencamino氏が挙げたのが、地方自治体ごとに違う許認可の要件である。充電設備を建てるたびに手続きが変わるため、設置が遅れるという指摘である。同氏は「政府も自らの役割を果たす必要がある」として、公的部門での電動車の導入も求めた。

発言している人の立場

この要望を読むうえで、押さえておくべき事実がある。Buencamino氏はEVAPの副会長であると同時に、AC Mobility Holdingsのモビリティ・インフラ責任者でもある。つまり、充電インフラで市場の45%超を占める側の当事者が、業界団体の立場で優遇の延長を求めている。

要望の中身が不当だという意味ではない。ただ、業界団体の声明と特定企業の利害が重なっていることは、読む側が知っておいてよい。

見るべきところ

関税ゼロは、国内で組み立てるより輸入したほうが安くなる方向に働く。普及を急ぐには効くが、国内に生産を呼び込む政策とは向きが逆になる。重要鉱物の大統領令が国内での加工を促そうとしているのとは、対照的な構図である。

フィリピンはニッケルの生産で世界2位にあり、電池材料の供給側に位置する。材料を出す国が、完成した車を輸入する側にとどまるのか。優遇の期限をどこに置くかは、その分かれ目にも関わってくる。

SOURCES / 出典

  1. PhilSTARメディア
    Zero tariff for electric vehicles pushed until 2040philstar.com
  2. The Philippine Starメディア
    Zero tariff for electric vehicles pushed until 2040philstar.com

参考(本文の補足)

  1. EVAPElectric Vehicle Association of the Philippines
  2. ACMobilityACMobility

SHARE

#EV#電気自動車#ハイブリッド#関税#EVAP#EVIDA#充電インフラ

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS
トレンド

フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場

フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。

市場分析

フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】

PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。

フィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない

フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。