家計消費の伸びが5四半期連続で鈍化。スーパーは年末商戦に期待せず
KEY POINTS
- ニュースの要点
- 第2四半期の家計最終消費支出は前年同期比2.8%増にとどまり、5四半期続けて伸びが鈍った。2021年1〜3月の4.8%減以来の低さで、同じ四半期のGDP成長率2.3%はパンデミック後の最低である。DEPDev長官は下半期も緩やかな回復にとどまるとした。
- この動きの意味
- 物価は7月時点で6.2%と目標の2〜4%を大きく超え、治水事業の汚職問題を受けて公共建設は32.4%減っている。消費を押し戻す力が物価と公共投資の両方で働いていないため、年末商戦でも数量は伸びないと小売の現場が見ている。
- 今後の注目点
- 8月以降のインフレが目標圏内に近づくか。公共インフラ支出が下半期に回復するか。第4四半期の小売の売上が数量ベースで伸びるか。経常赤字が中央銀行の見通しどおり通年GDP比3.6%に収まるか。
経済計画開発省(DEPDev)の Arsenio Balisacan 長官が、下半期の家計消費について「大きな反転は期待できない。緩やかなものだ」と述べた。記者団の質問に答えたもので、インフレの鈍化と公共インフラ支出の回復が条件になるとした。
数字を見ると、なぜ長官が期待値を下げにきたのかが分かる。
4〜6月の2.8%は5四半期続けての鈍化。2021年1〜3月の4.8%減以来の低さになる。
第2四半期の家計最終消費支出は 2.8%増。5四半期続けて伸びが鈍り、2021年1〜3月に4.8%減を記録して以来の低さである。同じ四半期のGDP成長率は2.3%で、パンデミック後の最低を更新した。
止めているのは物価と、工事が止まったこと
Balisacan長官が挙げた要因は2つある。
1つはインフレである。7月の消費者物価は前年同月比6.2%で、6月の6.4%から鈍った。ただし1〜7月の平均は5.0%で、前年同期の1.7%とは水準が違う。中央銀行の目標である2〜4%を大きく上回ったままである。8月のインフレ率もアナリスト予想の中央値は6.0%で、目標超えが続く見込みとなっている。
もう1つは公共工事である。第2四半期の公共建設は 32.4%減。昨年の治水事業をめぐる汚職問題を受けて、インフラ関係の官庁が発注に慎重になったままである。長官はこう説明した。「公共インフラ事業が動いていれば、民間の建設にも影響する。だから全国に波及効果が生まれる」
逆に言えば、いまは波及していない。上半期のインフラ支出は40.8%減っている。長官は汚職問題が消費者と企業の心理を冷やし続けているとも述べ、「インフレが下がり、統治への見方を改善する法案を議会が通してくれることを願う」と付け加えた。
スーパーは年末商戦に期待していない
小売の現場の見立ては、さらに冷めている。フィリピン統合スーパーマーケット協会の Steven Cua 事務局長は、9月から始まる「ber months」(September以降のクリスマス商戦期)についてこう述べた。
「ひとつの神話は、ber monthsに売上が増えるというものだ。増えない。我々にとっては閑散期だ」
クリスマス本番についても「にぎやかではあるだろう。ただし数量で見れば、大手も含めて誰もが来年の第1四半期を見ている」と語っている。
証券会社の見方も似た方向を向く。Globalinks証券の Toby Allan Arce 氏は「第4四半期は第3四半期より強いはずだが、消費のブームではなく 正常化 と表現したい」と述べた。チャイナバンク・キャピタルの Juan Paolo Colet 氏はより慎重で、「消費者は高い物価、低成長、高い金利、そして自然災害に圧迫されている」と指摘している。
信用意識指数が過去最高の75に達した一方で、家計の見通しは調査開始以来の最低だったという調査結果とも、方向は一致する。
その先にある「貯蓄が投資に足りない」問題
Balisacan長官の話とは別に、中央銀行のEli Remolona総裁が同じ時期に上院の予算審議で挙げたのは、もっと長い時間軸の問題だった。フィリピンの貯蓄率が低く、経常収支の赤字が続いているという指摘である。
| 金額 | GDP比 | |
|---|---|---|
| 2026年1〜3月の経常赤字 | 56億6,000万ドル(約9,000億円) | 4.8% |
| 前年同期 | 42億ドル(約6,700億円) | 3.7% |
| 2026年通年の見通し(中央銀行) | 180億ドル(約2兆8,600億円) | 3.6% |
総裁の説明は簡潔である。「経常収支は長いあいだマイナスだ。できるかぎり貯蓄が増えることを願う。それが長期の解決策だからだ」。国内の投資が国内の貯蓄を上回っているため、足りない分を海外から調達しなければならない、という構造である。
この見立てには反論もある。シンクタンクIBON財団のJose Enrique Africa事務局長は、家計の貯蓄が低いことの原因を家計の側に置く見方に異議を唱えている。
長官自身も、消費に頼る成長からの転換を口にした。投資の誘致、高付加価値の輸出、農業と工業の立て直しの3つである。消費が経済の主たる牽引役であるフィリピンにとって、これは短期の景気対策ではなく構造の話にあたる。
換算は1ドル=159円(2026年8月21日時点)で計算した目安である。
SOURCES / 出典
- BusinessWorldメディアBalisacan sees gradual recovery in household consumptionbworldonline.com
- The Philippine StarメディアModerate pickup in consumer spending seenphilstar.com
参考(本文の補足)
- Bangko Sentral ng PilipinasBangko Sentral ng Pilipinas
- DEPDevDepartment of Economy, Planning and Development
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