フィリピンのインフラ支出が上半期40.8%減、7月の財政赤字は4.6倍に膨らむ
KEY POINTS
- ニュースの要点
- 予算管理省(DBM)によると、2026年1〜6月のインフラ・資本支出は前年同期比40.8%減の3,674億ペソ(約9,550億円)で、6月単月では34.1%減の980億ペソだった。一方、財務省国庫局(BTr)によると7月の財政赤字は1,063億ペソ(約2,760億円)と前年同月の4.6倍に膨らみ、1〜7月の累計赤字は8,931億ペソで通年上限の53.8%に達した。
- この動きの意味
- 支出全体は約20%伸びているのに、インフラだけが落ちている。政府は洪水対策事業の不正問題を受けて支払いの検証・監査・書類要件を強化しており、その手続きが公共工事の資金交付を止めている。AMROとBSPがそろって指摘する「投資の落ち込み」は、この会計手続きの厳格化が実体である。
- 今後の注目点
- 予算管理省が見込む下半期の支出回復が実際に起きるか。公共事業道路省(DPWH)への追加交付がどの時期に出るか。厳格化した審査手続きが緩められるのか、それとも支出の遅れを許容し続けるのか。
フィリピンの公共投資が止まっている。予算管理省(DBM)の最新データによると、2026年1〜6月のインフラ・その他資本支出は前年同期比 40.8%減 の 3,674億ペソ(約9,550億円) だった。前年同期は6,202億ペソ(約1兆6,100億円)である。6月単月では34.1%減の980億ペソ(約2,550億円)で、前年同月は1,488億ペソだった。
理由は景気ではなく、手続きである。DBMはこう説明している。「公共事業道路省(DPWH)のインフラ支出は、公的資金が適切に書類化され検証され法令に適合した工事に対してのみ交付されることを確実にするために導入された、支払いの検証・監査・書類上の安全策の強化を受けて影響を受けた」
背景にあるのは、1年前に表面化した洪水対策事業をめぐる不正問題である。この問題は2025年の成長率をコロナ禍以降で最も弱い4.4%まで引き下げた要因の一つでもあった。その後始末として導入された支払い審査が、いま公共工事の資金を止めている。
支出全体は伸びているのに、インフラだけが落ちている
見落としやすいのは、政府支出そのものは減っていないことである。財務省国庫局(BTr)によると、7月の歳出は前年同月比19.82%増の 5,886億ペソ(約1兆5,300億円) に増えた。中東情勢の影響に対応する「生計・産業・食料・交通の統合パッケージ」にもとづく各種の社会扶助、国軍近代化計画にもとづく資本支出、運輸省の外国支援による鉄道事業への開発パートナーからの直接支払いが伸びを牽引した。
一方で歳入は伸び悩んだ。7月の歳入は2.12%増の 4,823億ペソ(約1兆2,500億円) にとどまる。税収は7.02%増の4,527億ペソだった一方、税外収入が39.92%減の296億ペソに落ちたためである。中央銀行(BSP)からの配当納付の時期がずれたことが主因で、BSPは今年2月に590億ペソ、7月に34億ペソを納付したのに対し、2025年7月には189億ペソ(約491億円)を納めていた。
結果として、7月の財政赤字は前年同月の189億ペソから 461.73%拡大 し、1,063億ペソ(約2,760億円) になった。ただし6月の2,643億ペソからは59.8%縮小している。利払いは29.14%増の1,372億ペソで、国内債と外貨建て債の利払い、そして為替変動の影響によるとBTrは説明した。
1〜7月の累計では、財政赤字は13.85%増の 8,931億ペソ(約2兆3,200億円) になった。開発予算調整委員会(DBCC)が5月に上方修正した通年の赤字上限 1兆6,590億ペソ(約4兆3,100億円) の53.84%にあたる。
AMROとBSPが指す「投資の落ち込み」の正体
この数字は、同じ日に出た2つの発表と直接つながる。
AMROはフィリピンの2026年成長率見通しを3.4%へ引き下げたが、その理由に「低調な投資」を挙げ、下半期の公共建設の緩やかな回復を下支え要因と見ていた。BSPは同じ日に3会合連続の利上げを決めたが、レモロナ総裁は「財政措置の支援を受けて、下半期には成長が強まると見込まれる」と述べている。
どちらの見通しも、公共投資が戻ることを前提にしている。その前提を作るのはDBMの交付判断であり、いまその判断は「速く出す」より「正しく出す」に振れている。
1〜6月のインフラ・資本支出3,674億ペソは、同期間の計画額9,315億4,000万ペソのわずか39%である。地方自治体への出資・資本移転を含めた総額でも5,483億ペソにとどまり、修正後の計画1兆2,720億ペソの半分に届かない。
DBMは第3四半期に回復するとみており、DPWHへの追加交付のほか、教育省の基礎教育施設、農業省の農道、国軍近代化計画、運輸省の外国支援鉄道事業の未払い金の決済が支出を押し上げ得るとしている。
ただしキム・ロバート・デ・レオン予算相代行は、支出を速めることが統制の緩和を意味しないと釘を刺した。「我々は安全策の緩和を一切提案していない。むしろ、さらに安全策を求めている」
地方自治体への移転を含めたインフラ関連支出の上半期合計は、Philippine Daily Inquirer が5,483億ペソ(前年比26.3%減)、BusinessWorld が5,181億ペソ(同28.1%減)と報じており一致しない。本文では、同じ記事内でDBMの計画額との比較まで示している Inquirer の数値を採った。通年の赤字上限も1兆6,580億ペソ(Inquirer)と1兆6,590億ペソ(BusinessWorld)で差がある。
本記事のペソ建て金額は 1ペソ=約2.6円(2026年8月21日時点のレート)で換算した。
SOURCES / 出典
- Philippine Daily InquirerメディアPH July budget deficit widens 462% to P106.3Bbusiness.inquirer.net
- BusinessWorldメディアBudget deficit widens more than fivefold in Julybworldonline.com
- BusinessWorldメディアInfrastructure spending plunges by 34% in Junebworldonline.com
- The Philippine StarメディアBudget shortfall widens to P106.3 billionphilstar.com
参考(本文の補足)
- Department of Budget and ManagementDepartment of Budget and Management(予算管理省)
- Bureau of the TreasuryBureau of the Treasury(財務省国庫局)
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