8月のインフレ率、アナリスト20人の中央値は6.0%。5か月ぶりの低さでも目標超え
KEY POINTS
- ニュースの要点
- BusinessWorldがアナリスト20人に聞いた調査で、8月の消費者物価上昇率の中央値は6.0%だった。7月の6.2%から鈍化し、実現すれば3月の4.1%以来5か月ぶりの低さになる。ただし中央銀行(BSP)の目標3%を超えるのは6か月連続で、1〜8月の平均は5.1%になる。
- この動きの意味
- 鈍化の理由は物価が落ち着いたからではなく、燃料と電気代が下がったからである。食品はむしろ上がっており、8月にフィリピンを襲った4つの台風が供給を細らせた。物価の中身が入れ替わっているだけで、水準は目標の倍のままである。
- 今後の注目点
- 9月4日の統計庁の発表が6.0%に近いか、BSP予想の上限6.5%に寄るか。9〜11月に「強い」と予想されるエルニーニョが食品価格をどう動かすか。10月22日のBSPの決定会合で追加利上げがあるか。
8月のインフレ率は下がる見通しである。ただし、下がる理由が問題になる。
BusinessWorldがアナリスト20人に聞いた調査で、8月の消費者物価上昇率の中央値は 6.0% だった。7月の6.2%から鈍化し、実現すれば3月の4.1%以来 5か月ぶりの低さ になる。前年同月は1.5%だった。
ただし、これでも中央銀行(BSP)の目標である3%を超えるのは 6か月連続 である。6.0%なら1〜8月の平均は5.1%になる。統計庁(PSA)の発表は9月4日である。
BSPは8月のインフレ率を5.5〜6.5%と予想しているので、今回の予想はその範囲の中央にあたる。
食品は上がり、燃料と電気は下がった
押し上げているのは食品である。8月、フィリピンを 4つの台風 が襲い、南西モンスーンを強めて各地に大雨と深刻な洪水をもたらした。
Security Bank のチーフエコノミスト Angelo B. Taningco 氏はこう述べている。「8月のインフレは、豪雨と洪水という悪天候の結果としてコメ、魚、果物、野菜といった食品の価格が上がったこと、そして原油価格の高止まりによる輸送インフレが高かったことに一部起因する」
ユニオンバンクのチーフエコノミスト Ruben Carlo O. Asuncion 氏は、供給網への影響を指摘する。「強められたモンスーンの雨は物流と流通の経路にも影響し、局所的な供給制約を生んで、当月の食品価格を押し上げたと考えられる」
コメの値上がりは大きい。8月後半の普通精米の小売価格は1キロ49.61ペソで、前年同月の40.35ペソから22.95%高い。前月の49.3ペソからも0.63%上がった。上白米は1キロ56.29ペソで、前年の47.07ペソから19.59%、前月の55.69ペソから1.08%の上昇である。
一方で全体を押し下げたのは、燃料と電気代である。当月はこの2つが下がったことが、指数を和らげたとみられている。
つまり、物価の中身が入れ替わっているだけで、水準は目標の倍のままである。
この先はエルニーニョ
次の局面は天候である。BSPが3会合連続の利上げに踏み切った理由の一つが、9〜11月に「強い」、10月から翌1月に「非常に強い」と予想されるエルニーニョだった。農業省は、この規模なら農作物・畜産・漁業の生産が20〜30%減ると試算している。
台風が食品価格を押し上げた8月に続いて、乾燥がコメの生産を削るというのが、いま置かれている見通しである。BSPの残る決定会合は10月22日と12月17日である。
本記事のコメの小売価格は、前年比・前月比が論点のため円換算していない(1ペソ=約2.6円。2026年8月21日時点)。
SOURCES / 出典
- BusinessWorldメディアPhilippine inflation likely cooled to 6% in August — pollbworldonline.com
- Philippine Daily InquirerメディアPoll: August inflation seen cooling to 6.1%business.inquirer.net
- The Philippine StarメディアPoll: Inflation likely eased slightly in Augustphilstar.com
参考(本文の補足)
- Bangko Sentral ng PilipinasBangko Sentral ng Pilipinas(中央銀行)
同じカテゴリーのNews
RELATEDこの動きを読み解くInsights
INSIGHTSフィリピンの貧困率が9.7%に下がっても、家計の見通しが過去最悪な理由
フィリピンの貧困率が統計史上はじめて1桁の9.7%になりました。同じ8月に、家計の見通しは調査開始以来もっとも暗い水準に落ちています。矛盾ではありません。2つのデータは別の時期を見ています。その差を分けて読まないと、参入判断も売上計画も外れます。
三井住友は、なぜフィリピンの同じ財閥に5年で4回も出資したのか
日本の三井住友グループが、フィリピンで5年に4回、同じ企業グループの会社に出資しています。銀行に3回、そのリース会社、そして風力発電会社。フィリピンでは外国企業が銀行を100%買えるのに、三井住友は4分の1弱で止めています。買い取るつもりがないなら、何を狙っているのか。会社そのものより、その財閥が持つ顧客基盤でした。
600社が使ったSalariumは2023年にサービスを無期限停止、倒産も解散もしていない
フィリピンで勤怠から給与の振り込みまでを1つで担っていたSalariumは、2019年時点で約600社が使い、2021年までに2万社へ広げると語っていた会社でした。2023年8月に利用企業が資金を引き出せなくなり、12月31日にサービスを無期限で停止します。ただし倒産も解散もしていません。法人はいまも登記に残ったままです。何が起きたのかをたどります。



