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三井住友は、なぜフィリピンの同じ財閥に5年で4回も出資したのか

日本の三井住友グループが、フィリピンで5年に4回、同じ企業グループの会社に出資しています。銀行に3回、そのリース会社、そして風力発電会社。フィリピンでは外国企業が銀行を100%買えるのに、三井住友は4分の1弱で止めています。買い取るつもりがないなら、何を狙っているのか。会社そのものより、その財閥が持つ顧客基盤でした。

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三井住友は、なぜフィリピンの同じ財閥に5年で4回も出資したのか

日本の三井住友グループが、フィリピンで少し変わった買い物を続けています。

2021年から2026年までの5年間で4回。相手は毎回、ユチェンコ財閥という同じ企業グループの会社でした。最初は大手銀行に3回。次にその銀行のリース会社。そして先週、風力発電の会社です。

フィリピンでは、外国企業が銀行を100%買えます。それなのに三井住友は、4分の1弱で止めています。

会社を買い取るつもりがないなら、何を買っているのでしょうか

狙っているのは、会社そのものより、その財閥が持つ顧客基盤です。

銀行 → リース → 発電。売る商品が5年で3つに増えた

三井住友がユチェンコ財閥に入っていった順番
  1. 2021銀行に出資

    フィリピンの大手銀行RCBCの株を5%取得

  2. 2023 → 2025同じ銀行に買い増し

    20%、さらに24%へ

  3. 2026年8月その銀行のリース会社へ

    30%を取得

  4. 2026年8月同じ財閥の風力発電会社へ

    35%を取得予定

持ち分は読みやすさを優先して丸めている。正確には2021年が4.999%、2025年が24.46%。2026年の2件は同じ週に開示された。

最初の3回は同じ会社への買い増しです。2026年に相手が変わりました。出資先が増えたというより、その財閥に売れる商品が増えたと見るほうが実態に近い

ユチェンコ財閥は、銀行のRCBC、建設、損害保険、大学、エネルギーなどを抱えるフィリピンの企業グループです。風力発電の会社もこのグループに属します。

100%買えるのに、4分の1で止める理由

フィリピンは2014年に法律を変え、外国企業が銀行を丸ごと買えるようにしました。それ以前は6割までです。制度が邪魔をしているわけではありません

三井住友銀行がRCBCの株を2割まで増やしたときの、株主の顔ぶれを見てください。

RCBCの株主構成(2023年7月時点)
34%
20%
19%
5%
23%
  • ユチェンコ財閥の持株会社34%
  • 三井住友銀行20%
  • 台湾の生命保険会社19%
  • 世界銀行グループ5%
  • その他23%

三井住友銀行の2023年7月31日付リリースによる。「その他」は開示された4社の合計から編集部が差し引いて算出したもの。

外国のお金が3か所から入っていて、三井住友はその1つにすぎません。しかも財閥の持株会社を超えてはいない。経営権を取りにいく形になっていないのは、意図的だと考えるほうが自然です。

三井住友銀行は2023年の発表で、目的をこう書いています。

RCBCの全国の支店網と幅広い金融サービスを活用し、フィリピンでの事業拡大を目指すお客さまにサービスを提供する能力も拡大していく。

三井住友フィナンシャルグループ/三井住友銀行2023年7月31日付ニュースリリースRCBCへの追加出資の完了について

「フィリピンで事業を広げようとするお客さま」とは、主に日本企業のことです。支店網を手に入れるのではなく、支店網を使わせてもらう。それが出資の中身でした。

「銀行のお客さんにリースも売る」と、3か月前の計画書に書いてあった

2026年8月の2件が同じ週に出たのは、偶然ではありません。三井住友ファイナンス&リースが5月に公表した3か年の経営計画に、そのまま書いてあります。

同社はこの計画で、海外を担当していた2つの部署を1つにまとめました。直前の3年間を振り返った箇所で、自ら課題に挙げていたのが「海外事業の連携が弱いこと」です。

新しい部署がやると宣言したのは、次の2つでした。

  • 同じお客さまに、別の商品も売る
  • 自社にない事業は、現地の会社と組んで手に入れる

(計画書の原文では「クロスセルの強化」「ミッシングパーツの確保」と書かれています)

前者がリース会社への出資です。銀行が融資で付き合っている取引先に、リースで設備を出す。後者が風力発電への出資にあたります。フィリピンで発電所を動かした経験のない会社が、すでに動いている発電所の持ち分を買う。

この会社自体、銀行(三井住友フィナンシャルグループ)と商社(住友商事)が半分ずつ持っています。銀行の取引先網に商社らしい投資を差し込める作りだ、ということでもあります。

ちなみに、三菱UFJは逆を向いている

三菱UFJは2016年にセキュリティバンクの20%を一度に取得しましたが、2025年にはフィリピンで持っていた消費者金融の持ち分を提携先に売っています。片方は入口を増やし、もう片方は整理している。「日本のメガバンクの東南アジア戦略」とひとくくりにできる話ではありません。

この財閥は、30年前から日本企業の窓口だった

なぜユチェンコ財閥なのか。創業家の Alfonso T. Yuchengco 氏は1995年から1998年まで駐日フィリピン大使を務め、日本からの投資を呼び込む役目を負っていました。この財閥が組んできた日本企業には、東京海上、ホンダ、エーザイ、大和証券が並びます。2021年に始まったように見える関係は、30年以上前からある回路の上に乗っています

日本企業は「資金・設備・電力」を同じグループから調達できる

ここまでを、現地で事業を持つ日本企業の側から見ます。変わったのは1点です。

運転資金は銀行から。設備はリース会社から。電力は発電会社から。これまで別々に交渉していた3つが、資本でつながった1つのグループの中に入りました

有利とは限りません。話は早くなりますが、比べる相手が減るということでもあります。確かなのは、見るべき指標が「何%持っているか」ではなくなったことです。「その財閥のどの機能に、いくつ入っているか」のほうが、現場では効きます。

結局、欲しいのは会社の支配権ではなく、顧客との接点だった

三井住友はフィリピンで会社を買い集めているのではありません。ユチェンコ財閥が抱える顧客基盤を1つ選び、そこへ銀行、リース、電力と、自分たちが売れるものを足し続けています。

だから100%買えても24%で止まる。支配しなくても、売る相手には届くからです

この読み方が外れるとしたら、風力の話が消えたとき

見立てが正しいかどうかは、3つで分かります。

  1. 風力への出資は成立するか。止まれば「足りない事業を現地で補う」という仮説が弱まります。
  2. 次もユチェンコ財閥なのか。財閥への集中戦略なのか、フィリピン全体への投資なのかが分かります。
  3. RCBCの顧客に本当にリースが売れるか。売れなければ「資本は入ったが、商売は動かなかった」ということです。
金額について

本文では省きましたが、2023年の買い増しは271億2,600万ペソ(約705億円)、2025年は64億ペソ(約166億円)、風力発電は17億ペソ(約44億円)です。1ペソ=約2.6円(2026年8月21日時点)で換算しました。

SOURCES / 出典

  1. 三井住友ファイナンス&リース企業公式一次情報
    中期経営計画(2026〜2028年度)についてsmfl.co.jp
  2. Sumitomo Mitsui Financial Group / Sumitomo Mitsui Banking Corporation企業公式一次情報
    Announcement for Completion of Additional Investment in Rizal Commercial Banking Corporationsmbc.co.jp
  3. 三井住友ファイナンス&リース企業公式一次情報
    RCBC Leasing & Finance Corporationの株式取得完了についてprtimes.jp
  4. 三井住友ファイナンス&リース企業公式一次情報
    会社概要smfl.co.jp
  5. BusinessWorldメディア
    SMFL seals acquisition of 30% stake in RCBC Leasingbworldonline.com
  6. BusinessWorldメディア
    PetroEnergy to sell 35% Nabas wind stake to Japan firm for P1.7 billionbworldonline.com
  7. Philippine Daily Inquirerメディア
    SMBC boosts stake in RCBC to 24.46%business.inquirer.net
  8. eLegal Philippinesその他
    Republic Act 10641: The Act Allowing the Full Entry of Foreign Banks in the Philippineselegal.ph
  9. Philippine Daily Inquirerメディア
    Bank of Tokyo-Mitsubishi buys 20% of Security Bank for P37Bbusiness.inquirer.net
  10. Security Bank(PDS Group 開示)企業公式一次情報
    Security Bank completes acquisition of MUFG's 25% stake in Home Credit Philippinespdswordpressbucket.s3.ap-southeast-1.amazonaws.com

参考(本文の補足)

  1. GMA News OnlineRCBC OKs P27-billion capital infusion from Sumitomo Mitsui
  2. The Philippine StarSecurity Bank invests P11.6 billion for 25% stake in Home Credit
  3. Insurance Hall of FameAlfonso Yuchengco
  4. The Japan TimesYGC: Cultivating robust connections across borders
  5. Rizal Commercial Banking CorporationRCBC Conglomerate Map

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#三井住友#フィリピン#RCBC#ユチェンコ財閥#日本企業#銀行#出資

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