7月のホットマネーは91%減。1〜7月では39億ドルの流出超
KEY POINTS
- ニュースの要点
- 7月の外国portfolio投資は差し引き6,647万ドルの純流入で、前年同月の7億4,256万ドルから91.05%減った。3か月連続の純流入だが、1〜7月の累計では39億4,000万ドルの流出超で、前年同期の22億9,000万ドルの流入超から反転している。
- この動きの意味
- 入ってくる額は7か月で8.1%増えている。流出超に沈んだのは出ていく額が60.8%増えたためで、新規投資が止まったのではなく既存の資金が引き揚げている構図を示す。
- 今後の注目点
- 8月以降も純流入が続くか。10年物国債の利回りが7%台から下がるかどうか。外国人の売買比率が44%台から動くか。ペソが61ペソ台後半で止まるか。
7月にフィリピンへ入った短期の外国資金は、出ていった分を差し引いて 6,647万ドル(約106億円)だった。前年同月の7億4,256万ドル(約1,181億円)から 91.05%減である。中央銀行(BSP)が9月1日までに公表した。
純流入そのものは3か月続いている。ただし年初からの累計で見ると、風景はまったく違う。1〜7月は 39億4,000万ドル(約6,300億円)の流出超で、前年同期の22億9,000万ドル(約3,600億円)の流入超から反転している。
中央銀行の登録ベース。認可代理銀行を通じて登録された取引だけが対象になる。
入ってくる額はほぼ変わらず、出ていく額が増えた
91%減という数字は、投資家が新規の資金を引き揚げたから生まれたのではない。入ってくる額はほとんど変わらず、出ていく額だけが増えた結果である。
| 7月 | 1〜7月 | |
|---|---|---|
| 入ってきた額 | 23億7,000万ドル(約3,800億円)/前年比 −4.1% | 156億1,000万ドル(約2兆4,800億円)/+8.1% |
| 出ていった額 | 23億ドル(約3,700億円)/+33.2% | 195億5,000万ドル(約3兆1,100億円)/+60.8% |
| 差し引き | +6,647万ドル | −39億4,000万ドル |
7か月で見ると、入ってきた額は8.1%増えている。にもかかわらず流出超に沈んだのは、出ていった額が 60.8%増という桁違いの伸びを見せたからである。
国債から抜けて、株を買い戻した
7月の中身は、資産の種類で正反対に割れた。
- 国債など政府証券は2,000万ドル(約32億円)の流出超。前月の5億4,000万ドル(約860億円)の流入超から反転した
- 上場株は8,600万ドル(約137億円)の流入超。4か月続いた流出が止まった
国債から資金が抜けたのは、10年物国債の利回りが7%を超えた水準で高止まりしていた時期と重なる。中央銀行が8月に政策金利を5%へ引き上げた局面に入る直前である。
一方、株式相場は7月末に6,236.44で終え、6月末から3.3%上がった。証券取引所によれば、7月の売買の 44.3%が外国人の取引だった。この水準の外国人比率で株価が上がったということは、株の上昇は国内の資金ではなく外から来ていたことになる。ただしこの水準は、8月にPSEiが6,000を割り込む前の話である。
ペソが1年で8.5%下がった月
7月のペソは、対ドルの月平均が61.5963ペソだった。前年同月の56.7523ペソから 8.54%(4.844ペソ)下落している。月内には61.847ペソまで下げた。
UnionBank のチーフエコノミスト Ruben Carlo Asuncion 氏は「7月は3か月連続の純流入だが、ペースは6月の1億7,012万ドル(約270億円)から大きく鈍った。世界の環境が厳しくなるなかでも、外国人投資家がフィリピン資産に選別的に前向きであることを示している」と述べた。
SM Investments のグループ・エコノミスト Robert Dan Roces 氏は、7月の減速をペソの変動に結びつけている。「3か月続けて流入していることは前向きな兆しだ。ただし7月の流入額が小さくなったことは、世界の不確実性とペソの変動のなかで投資家が慎重なままであることを示している」
この数字を、どう受け止めるか
短期の外国資金(ホットマネー)は、株や債券のように売買しやすい資産に置かれる。工場や雇用に結びつく直接投資と違い、環境が変われば数日で向きを変える。フィリピンの実体経済を測る指標ではなく、投資家がこの国をどう見ているかの温度計として読むのが正しい。
その温度計は、7か月で39億4,000万ドル分の熱を失った。同じ期間、貿易赤字は7月に59億7,000万ドル(約9,500億円)へ拡大し、経常収支の赤字は第1四半期にGDP比4.8%へ広がっている。外から入る資金が細り、外へ出る支払いが増えるという同じ方向を向いた動きが、いまのペソ安の背景にある。
なお中央銀行への外国投資の登録は任意である。ただし投資元本の回収や配当の海外送金にあたって銀行から外貨を買う場合には登録が必要になるため、送金して回収するつもりの資金はほぼ登録される。この統計が資金の出入りを追える理由でもある。
換算は1ドル=159円(2026年8月21日時点)で計算した目安である。
SOURCES / 出典
- BusinessWorldメディアPhilippines saw net inflows of hot money drop sharply in Julybworldonline.com
- The Philippine StarメディアHot money inflows plunge 91% in Julyphilstar.com
- Philippine Daily InquirerメディアJuly PH ‘hot money’ net inflow plunges 91%business.inquirer.net
参考(本文の補足)
- Bangko Sentral ng PilipinasBangko Sentral ng Pilipinas
- SM Investments CorporationSM Investments Corporation
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