フィリピンへの海外直接投資が33%減、5月は11年ぶりの低さ
KEY POINTS
- ニュースの要点
- 2026年1〜5月の海外直接投資の純流入は21億7,800万ドルで、前年同期の32億7,000万ドルから33.4%減った。5月単月の2億1,000万ドルは2015年3月以来の低さである。証券投資も1〜7月で39億4,000万ドルの純流出になっている。
- この動きの意味
- 外資規制の自由化は進んだのに投資が来ていない。指摘されているのは法律ではなく事業コストのほうで、電気代・物流費・港湾の混雑・熟練労働者の不足が並ぶ。優遇措置で埋めようとしている穴が、優遇では埋まらない性質のものだという診断である。
- 今後の注目点
- 中央銀行が見込む通年70億ドルに届くか。6月以降の月次が2億ドル台から戻るか。証券投資の流出が止まるか。事業コストに直接効く政策(電力・港湾)が出てくるか。
「海外の投資家は、もうフィリピンを見ていない。我々は小さすぎる」
BDO Capital のEduardo Francisco社長の言い方は率直だった。数字がそれを裏づけている。
2026年1〜5月のフィリピンへの海外直接投資(FDI)の純流入は 21億7,800万ドル(約3,400億円)で、前年同期の32億7,000万ドル(約5,100億円)から 33.4%減った。5月の1か月だけを見ると2億1,000万ドル(約330億円)で、2015年3月以来11年ぶりの低さである。
フィリピン中央銀行の集計。純流入は実際に入ってきた資金を国際収支ベースで数えたもの。
株や債券に入る短期の資金も出ていっている。1〜7月の証券投資は 39億4,000万ドル(約6,100億円)の純流出で、前年同期は22億5,000万ドル(約3,500億円)の純流入だった。7月単月は6,647万ドル(約104億円)の流入とかろうじてプラスだが、年間では大きく水面下にある。
規制は開いたのに、投資が来ない
なぜか。Geronimo Law創業者のRussell Stanley Geronimo氏の診断が要点を突いている。
「自由化は法的な障壁を取り除いたが、事業を営むコストには手をつけなかった」
フィリピンはこの数年、外資規制の緩和を進めてきた。公共サービス法の改正、小売業自由化法の改正、外国投資法の改正といった一連の法改正である。にもかかわらず投資が増えないのは、法律の外側に理由があるということになる。
挙げられているのは具体的な負担ばかりである。
- 電気代の高さ
- 物流費
- 港湾の混雑
- 熟練労働者の不足
- 政治的な混乱
- 政策の予見しにくさ
Geronimo氏はさらにこう言う。「政府が優遇措置を差し出すのは、信頼を差し出せないときである」
税の優遇で埋めようとしている穴が、そもそも優遇で埋まる性質のものではない、という指摘である。
ベトナムとは逆方向に動いている
比較の際は測り方の違いに注意が要る。ここで粒度が変わる。
フィリピンの数字は中央銀行が集計する 純流入(実際に入ってきた資金)だが、ベトナムがよく発表するのは 登録ベース(投資すると届け出た額)で、実際の払い込みより大きく出る。したがって金額を並べて何倍という比べ方はできない。
比べられるのは方向である。 ベトナムの1〜5月の新規登録FDIは248億ドル(約3兆9,000億円)で前年同期比34.9%の増加だった。フィリピンが33.4%減っている同じ期間に、ベトナムは35%増えている。
中央銀行はフィリピンの2026年通年のFDIを70億ドル(約1兆900億円)と見込む。
景気そのものが弱っている
投資が来ない背景には、成長率の鈍化がある。2026年4〜6月期の実質GDP成長率は 2.3%で、1〜3月期の2.8%から下がった。上半期の平均は2.6%である。
Francisco氏は企業業績については別の見方をしている。「収益の面では、これらの企業は見通しを上回っている。極めて好調だ」。上場企業の利益は出ているが、国全体に新しい資金が入ってこないという状態にある。
日本の企業にとって
この記事の診断は、進出を検討する側にとって使いどころがある。
障害として名指しされたものの多くは、個別の立地選択で緩和できる類のものである。電気の安定についてはPEZAが経済特区に専用の配電網を敷く検討に入ったし、人材についてはグローバル拠点サービスの雇用が28万9,000人規模まで育っている。入居企業の要望に合わせて建てる産業用不動産も増えている。
国全体の数字が落ちていることと、特定の立地・業種で条件が改善していることは両立する。Geronimo氏が求めているのは制度と司法の改革だが、企業の側が待てるとは限らない。見るべきは全国平均ではなく、自社が置く場所のコスト構造である。
換算は1ドル=155.9円、1ペソ=2.49円(2026年9月4日時点)で計算した目安である。
SOURCES / 出典
- PhilSTARメディア'Philippines falls behind in race for foreign investments'philstar.com
- BusinessMirrorメディア5-month FDI inflows down 33.4% to $2.178Bbusinessmirror.com.ph
参考(本文の補足)
- Manila BulletinPhilippines foreign investment plunges to lowest level in 11 years
- Vietnam BriefingVietnam FDI Update: Q1 2026 Performance and Key Trends
- BDO CapitalBDO Capital & Investment Corporation
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