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不正送金の受け皿口座で年6,030億ペソ、GDPの3%相当という試算

FinTech

KEY POINTS

ニュースの要点
IDfy フィリピンとCIBI Information の共同白書「Mule Hunting: Are We Chasing Ghosts?」が、詐欺の受け皿となる口座(ミュール口座)を通じて年6,030億ペソ(約1兆5,000億円)が失われうると試算しました。GDPのほぼ3%にあたります。
この動きの意味
2025年にPESONetとInstaPayを流れた24兆7,400億ペソのうち、約1兆880億ペソが詐欺に晒されていたとの推計です。そのうち55.4%が、受け皿口座を必要とする手口だとしています。
今後の注目点
検証済みの銀行・電子ウォレット口座が500〜5,000ペソで売買されており、6〜7割は名義人が進んで貸しています。サイバー犯罪の公式な通報率は2%未満です。

IDfy フィリピンと信用情報会社 CIBI Information が、共同の白書を出しました。題名は「Mule Hunting: Are We Chasing Ghosts?」(ミュール狩り——我々は幽霊を追っているのか)です。

試算の道筋

段階数字
2025年のPESONet・InstaPayの取引額24兆7,400億ペソ(約61兆6,000億円)
うち詐欺に晒されたとの推計1兆880億ペソ(約2兆7,100億円)
うち受け皿口座を要する手口の比率55.4%
年間の損失の試算6,030億ペソ(約1兆5,000億円)
GDPに占める割合ほぼ3%

これは確定した被害額ではなく、模型による推計です。報告書自身がそう断っています。

55.4%という比率は、新興市場の基準値を当てはめたものです。対象となる手口は2つ。

  • 正規手続き詐欺(Authorized Push Payment、APP)— 利用者を騙して本人に送金させる
  • 口座乗っ取り(Account Takeover、ATO)— 他人の口座を支配する

報告書は「こうした略奪的な手口は、盗んだ資金を受け止めて転送するミュール口座なしには機能しない」としています。

口座は売られている

検証済み口座の価格500〜5,000ペソ(約1,200〜1万2,500円)
名義人が進んで貸している割合60〜70%
脅されて使われている割合30〜40%(恋愛・投資詐欺、偽の在宅求人など)

6〜7割は、名義人が自分で貸している。ここが対策の難しさです。乗っ取りなら本人が気づきますが、貸し出しなら誰も通報しません。

なぜ止まらないのか

報告書が挙げた構造的な理由です。

  • 通報されない。サイバー犯罪の公式な通報率は2%未満。サイバー犯罪捜査調整センターのデータでは34%のフィリピン人が金銭的な詐欺被害に遭っているが、1件あたりの金額が小さく手続きが複雑なため、正式な申し立てはほとんど行われない
  • 金融機関の間で情報が共有されない

CIBI社長兼CEOの Pia Arellano 氏は、この点をこう表現しました。

ミュールの組織は、BDO、UnionBank、GCashといった複数の基盤をまたいで取引を一気に走らせることができる。一方で、それぞれの法令順守の担当が見ているのは、小さく断片化した一部分にすぎない

Pia ArellanoCIBI Information 社長兼CEO

結果として、武器化された口座は何か月も活動を続け、記録上はきれいなままでいられます。

背景にあるもの

2025年、フィリピンの小売決済に占める電子決済の件数比率は 64.7% でした。報告書は「この急速な成長が、国境をまたぐ組織に利用される隙を作った」としています。

InstaPayとPESONetの送金は1〜8月で22兆1,000億ペソ、件数は58億件まで膨らんでいます。手数料の無料化で小口の送金が一気に増えました。

提言

  • 不正に関する情報の機関横断での共有
  • AIによる取引の常時監視
  • 端末の紐づけ(device binding)
  • サーバー側での生体認証

日系企業にとっての読みどころ

フィリピンで決済や給与振込を扱う企業にとって、実務上の含意は2つです。

受け取り側の確認。取引先の口座が受け皿として使われていた場合、資金が凍結される可能性があります。特に新規の取引先への初回送金は、口座名義と取引実態の一致を確認する価値があります。

本人確認の負荷が上がる方向。報告書の提言がそのまま規制になれば、口座開設と取引の確認は厳しくなります。従業員の給与口座の開設や、法人口座の管理者変更といった手続きで、要求される書類が増える方向に動きます。

もう一点、6,030億ペソという数字が推計であることは押さえておく必要があります。24兆7,400億ペソという取引総額は中央銀行の実データですが、4.4%という詐欺率も55.4%という比率も外部の基準値です。方向を示す数字として読むのが妥当です。


1ペソ=2.49円で換算しています(2026年9月4日時点)。

SOURCES / 出典

  1. The Philippine Starメディア
    Philippines risks losing P603 billion yearly to digital fraud – reportphilstar.com
  2. BusinessWorldメディア
    Rapid payment digitalization heightens money mule threatsbworldonline.com

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#不正送金#ミュール口座#詐欺#InstaPay#CIBI#サイバー犯罪

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