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2025年のフィリピン最大の資金調達は5億円。それを超えるお金が国外から来る理由

Forbes Asiaの「100 to Watch」に、フィリピンから2社が入りました。並べてみると、フィリピンで大きな資金を集めた会社には共通点があります。お金を出しているのが、ほぼ全部フィリピンの外の投資家です。理由は起業家の考え方ではなく、国内のベンチャーファンドの大きさにありました。

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2025年のフィリピン最大の資金調達は5億円。それを超えるお金が国外から来る理由

本日、Forbes Asiaの「100 to Watch」にフィリピンから2社が入りました。Clouted と OneLot Technologies です。

この2社と、当媒体がここ数日で取り上げた3社を並べると、はっきりした共通点が出てきます。

大きな資金を出しているのが、ほぼ全部フィリピンの外の投資家です。

なぜそうなるのかを見ていきます。

5社を並べてみる

会社会社の場所大きな資金を出したのは誰か
Cloutedマニラとロサンゼルスの2か所米国の Slow Ventures が主導。2026年5月に 700万ドル(約11億円)
Kitaサンフランシスコ米国の BoxGroup が主導。2026年8月に450万ドル(約7億円)
OneLotフィリピン米国の Accion Ventures とドイツの 468 Capital が共同で主導。2025年11月に330万ドル(約5億円)
Kumu事業はフィリピン資本を受ける会社をシンガポールに置いた。累計1億ドル超(約159億円)
Mayaフィリピン国内の取引所より先に、米国での上場を目指している

会社の場所はばらばらです。サンフランシスコにある会社もあれば、フィリピンにある会社もあります。

それでも、お金の出どころは全部国外でした。

OneLotはフィリピンに会社があり、国内の Kaya Founders も出資しています。ただし主導したのは米国とドイツの投資会社で、ほかに参加したのもスイスの Seedstars、米国の Everywhere VenturesCrestone Venture Capital でした。国内の投資家は、主導する側には回っていません。

2025年で最大の調達は5億円だった

金額を並べると、輪郭がはっきりします。

OneLotが2025年11月に集めた 330万ドル(約5億円)は、その年のフィリピンで最大の調達 でした。投資したAccion自身がそう発表しています。

その額を、2026年に入って2社が超えました。

調達額主導した投資会社
OneLot(2025年11月)330万ドル(約5億円)← 2025年のフィリピン最大米国・ドイツ
Kita(2026年8月)450万ドル(約7億円)米国
Clouted(2026年5月)700万ドル(約11億円)米国

フィリピンで年間最大だった金額を、国外の投資会社が普通に超えていきます。

理由は簡単で、国内のファンドが小さい

「フィリピンの起業家が外を向いているから」と説明したくなりますが、数字を見ると、もっと単純な事情が先に立ちます。

国内のベンチャーファンドに、1社へ11億円を出せる大きさがないのです。

フィリピンを拠点とする主なベンチャーファンドの規模ファンドの総額(単位:百万ドル
ACTIVE Fund(Kickstart運営)
180
Foxmont Fund III
30
Kaya Founders
25

ACTIVE Fund は2020年組成でアヤラ系。Foxmont Fund III は2025年8月の初回クローズ時点の額。Kaya Founders は2025年11月の最終クローズ額。組成時期が異なるため単純な比較ではありません。

3つのうち最大の ACTIVE Fund(アヤラ系、Kickstart Ventures が運営)は1億8,000万ドル(約286億円)で、フィリピンから生まれた最大のベンチャーファンドです。

ただし、この資金は創業まもない会社には来ません。理由は2つあります。

  • フィリピンの会社だけを対象にしたファンドではありません。世界中の会社に投資します
  • 投資するのはシリーズA以降です。1社あたり200万〜1,000万ドル(約3億〜16億円)を、ある程度育った会社に入れます

創業まもない段階を担うのは、残りの2つです。Foxmont Capital Partners の3号ファンド(2025年8月に3,000万ドル(約48億円)で初回クローズ)と、Kaya Founders のファンド(2025年11月に2,500万ドル(約40億円)で最終クローズ)。

48億円のファンドが、1社に11億円は入れられません。 ファンド全体の4分の1が1社に集中してしまい、他に投資できなくなるからです。ベンチャー投資は当たり外れが大きいので、1社への金額は自然に小さくなります。

つまり、フィリピンの会社が11億円を集めたければ、国内の投資家をいくら回っても届きません。 外に出るしかない構造になっています。

国内のファンドのお金も、国外から来ている

もう一段掘ると、話はさらに手前に戻ります。

創業まもない会社に投資する Foxmont の3号ファンドは、オランダの開発金融機関 Dutch Good Growth Fund が中心の出資者 です。フィリピンに特化したこの種のファンドに、こうした国際機関が出資したのは初めてでした。

国内ファンドの元手そのものが、国外から入っています。

市場全体の大きさも確認しておきます。2025年上期にフィリピンのスタートアップが集めた資金は、15件で合計8,640万ドル(約137億円) でした。1件あたりの平均は576万ドル(約9億円)です。

Startup Genome の集計では、マニラで創業まもない会社が1件あたりに集める額の平均は 228万ドル(約4億円)。アジア全体の平均は490万ドル(約8億円)、世界平均は554万ドル(約9億円)です。フィリピンの相場は、アジア平均の半分以下です。

この見方の弱いところ

自分の議論を疑っておきます。

見ている会社が偏っています。 私が並べたのは、国際的な資金を集めて話題になった会社ばかりです。国外の投資家が出てくるのは当たり前とも言えます。「国内の投資家だけで大きな資金を集めた会社」を探しましたが、見つかりませんでした。ただし 見つからないことは、無いことの証明にはなりません。

原因と結果の向きも決まりません。 国外とつながっていたから資金が付いたのか、資金を集める過程で国外とつながったのか。Kitaはスタンフォード大学で生まれ、米国のアクセラレーターに入り、その流れでサンフランシスコにあります。Cloutedも2024年に米国のアクセラレーターを通っています。後者に見えますが、この5社だけでは断定できません。

日本企業がここから持ち帰るもの

フィリピンのスタートアップに出資するとき、その会社がどの国の法人なのかを最初に確かめること。

会社の紹介に「マニラ」と書いてあっても、出資する先がフィリピンの法人とは限りません。確かめるのは次の4つです。

  1. 契約書に出てくる法人は、どの国の会社か — Kumuが2020年にシリーズAを受けたとき、契約の主体はシンガポールの持株会社でした。フィリピンの事業会社ではありません
  2. 増資を引き受けるのは、どの法人か — 国外の持株会社に出資するのと、フィリピンの事業会社に出資するのとでは、持つものが変わります
  3. 誰が決めているのか — 本社が2か所ある会社では、事業の判断と資本の判断が別の場所にあることがあります
  4. 将来どこで売却や上場を狙っているか — 国内上場を前提にしていない会社は珍しくありません

相手を疑うための項目ではありません。フィリピン市場に投資したつもりが、実際には米国やシンガポールの会社の株を持っていた、というずれを避けるための確認です。

裏を返せば、これは入りやすさでもあります。国外に法人があるということは、シンガポールや米国の慣れた枠組みで話ができる ということです。Kitaの資金調達には、日本人が創業したシンガポールのファンド BEENEXT が入っていました。フィリピンの案件に日本の資本が届く道は、現地法人を直接たどるより、こちらのほうが太いかもしれません。

次に見るべき数字

  1. 国内の投資家だけで8億円を超える調達が出るか — この記事の見方を崩す、いちばん直接的な反証になります
  2. Foxmont 3号ファンドの最終的な金額 — 48億円は2025年8月の途中経過です
  3. ACTIVE Fund の次のファンド — 286億円の後継が作られるか、投資する段階が創業まもない会社まで下りてくるか
  4. Cloutedがマニラとロサンゼルスのどちらに寄るか — 2か所のままなのか、片方に集まるのか
  5. 2026年通年のフィリピンの調達総額と件数 — 2025年上期は15件・137億円でした

円換算は2026年8月21日時点のレート(1ドル=159円、1ペソ=2.6円)による目安です。

SOURCES / 出典

  1. BusinessWorldメディア
    Philippine startups Clouted, OneLot make Forbes Asia 100 to Watch listbworldonline.com
  2. Accion企業公式一次情報
    OneLot Raises $3.3M in the Philippines' Largest Seed Round of 2025 to Scale its Financing Platform for Used Car Dealersaccion.org
  3. TechCrunchメディア
    Clouted wants to take the guesswork out of making short videos go viraltechcrunch.com
  4. TechNode Globalメディア
    Foxmont secures $30M first close for Fund III, anchored by Dutch DFItechnode.global
  5. Kickstart Ventures企業公式一次情報
    ACTIVE Fund(Kickstart Ventures 運営)kickstart.ph
  6. BusinessWorldメディア
    Kaya Founders raises $25M fund to back more Filipino foundersbworldonline.com

参考(本文の補足)

  1. PHILIPPINES STARTUPマニラで見つけた課題を4か国に広げたKitaが、シードで約7億円を集めた理由
  2. PHILIPPINES STARTUP1,000万ダウンロードで課金者2万人、Kumuがユニコーンになれなかった理由
  3. PHILIPPINES STARTUP3年で10社が上場廃止になったフィリピンで、2026年の新規上場がゼロである理由
  4. PHILIPPINES STARTUPフィリピンのスタートアップ投資が「過去最高」とも「6年ぶりの低水準」とも報じられる理由
  5. PHILIPPINES STARTUPForbes Asiaの注目100社にフィリピンから2社、インドは19社

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#スタートアップ#資金調達#ベンチャーキャピタル#エコシステム

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