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フィリピンの平均年収は約67万円。職業別の給料ランキングTOP10と最低賃金【2026年版】

フィリピンの平均年収は約67万円。日本の478万円と並べると7.1倍の差がある。ただしこの平均は、日本企業が採用する層の給料ではない。フィリピン統計庁の2024年調査から、職業別の給料ランキングTOP10、産業ごとの相場、日本を上回る速さで進む最低賃金の引き上げを整理する。

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フィリピンの平均年収は約67万円。職業別の給料ランキングTOP10と最低賃金【2026年版】

「フィリピン人の給料っていくらなの?」という問いに、いちばん確かな数字で答えます。

フィリピン統計庁(PSA)の2024年職業別賃金調査(Occupational Wages Survey)によると、フルタイムで働く時間給労働者の平均月額賃金は 2万1,544ペソ(約5万6,000円)。12か月分に直すと25万8,528ペソ、日本円で約67万円です(編集部算出。1ペソ=2.6円、2026年8月21日時点のレート)。

日本の平均給与は478万円(国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」)。並べると7.1倍の差になります。

ただ、この「7.1倍」をそのまま受け取ると、たぶん判断を誤ります。フィリピンで実際に募集がかかっている仕事の給料は、この平均のどこにもないからです。順に見ていきます。

「平均2万1,544ペソ」は、誰を数えた数字なのか

OWSが対象にしているのは従業員10人以上の正規の事業所です。露天商、ジプニーの運転手、家事労働者、農村の日雇いは入っていません。この2万1,544ペソは、フィリピンの労働者全体の平均ではなく、制度の中で働いている人の平均です。

内訳は基本給が2万309ペソ、諸手当が1,235ペソ。地域別ではマニラ首都圏(NCR)が2万9,310ペソで最も高く、全国平均を36%上回ります(編集部算出)。

もうひとつ、日本の感覚とは食い違うところがあります。女性の平均月額賃金2万2,236ペソが、男性の2万1,009ペソを上回っていることです。日本では平均給与が男性587万円・女性333万円で1.76倍の開きがあります(国税庁、同調査)。管理職比率などの論点は別にあるとしても、賃金の平均値そのものは逆転しています。

高収入の職業トップ10は、5つがIT・数理の専門職

2024年調査で最も高収入だった職種は、次の10です。産業ごとに集計されているため、同じ職種でも属する産業が違えば別の行になります。

順位職種(属する産業)平均月額賃金
1航空機操縦士(航空輸送)13万7,999ペソ(約36万円)
2航空保安電子技術者(航空輸送)13万1,536ペソ
3化学エンジニア(コークス・石油精製)10万1,996ペソ
4数理・アクチュアリー(保険・年金)9万9,154ペソ
5アプリケーションプログラマー(保険・年金)9万6,360ペソ
6Web・マルチメディア開発者(映像制作)7万9,064ペソ
7アプリケーションプログラマー(通信)7万3,804ペソ
8数理・アクチュアリー(通信)7万1,237ペソ
9ソフトウェア開発者(出版)6万6,180ペソ
10産業・生産エンジニア(電気・ガス・空調)6万5,806ペソ

表内の円換算は煩雑になるため省きました。1位の13万7,999ペソでも月約36万円、年収にすると約431万円です(編集部算出)。

目を引くのは1位ではありません。4位から9位までの6つのうち5つがプログラマー・ソフトウェア開発者・アクチュアリーであるという点です。フィリピンの高収入職は、いま数理とソフトウェアに寄っています。

日本と比べると、どこが違うのか

上位の顔ぶれが、まったく別

日本側も同じように、公式統計から上位10職種を出しました。厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(職種小分類・産業計・男女計)から、月額給与に年間賞与を足して年収に直したものです(編集部算出)。

順位フィリピン日本(年収)
1航空機操縦士航空機操縦士(1,697万円)
2航空保安電子技術者医師(1,338万円)
3化学エンジニア歯科医師(1,136万円)
4数理・アクチュアリー大学教授(1,093万円)
5アプリケーションプログラマー管理的職業従事者(917万円)
6Web・マルチメディア開発者獣医師(885万円)
7アプリケーションプログラマー大学准教授(881万円)
8数理・アクチュアリー公認会計士・税理士(856万円)
9ソフトウェア開発者法務従事者(765万円)
10産業・生産エンジニアシステムコンサルタント・設計者(753万円)

1位が両国ともパイロットである一方、2位以下は1つも重なりません。

日本の上位を占めるのは、医師・歯科医師・大学教授・獣医師・公認会計士・法務従事者——資格と学位で参入が制限されている職業です。IT系は10位のシステムコンサルタントが1つ入るだけ。

フィリピンは逆で、資格職はトップ10に1つも入らず、代わりにIT・数理が5つを占めます。日本で「高収入の職業」と言われて思い浮かぶ顔ぶれと、フィリピンのそれは別物だということです。

同じ職種で並べると、差はこうなる

顔ぶれが違うので、両国に共通する3職種だけを取り出して並べます。賞与の扱いが国で違うため、どちらも賞与を除いた月額給与を12倍して比べます。フィリピン側は「その職種を最も高く払っている産業」の数字、日本側は「全産業の平均」なので、実際の差は表よりさらに大きくなります。ここは粒度が揃っていません。

職種フィリピン日本
航空機操縦士約431万円1,522万円3.5倍
化学エンジニア・化学技術者約318万円477万円1.5倍
ソフトウェア開発者約206万円463万円2.2倍

読むべきは、フィリピンで最も高く払っている産業の相場ですら、日本の同職種の平均には届かないということです。冒頭の「7.1倍」は、職種を揃えると1.5〜3.5倍まで縮みます。国全体の平均で見えていた差の大部分は、賃金水準の差ではなく、どんな仕事に人が就いているかの差でした。

5年で変わったのは、1位ではなく2位以下

このページの旧版は、労働雇用省(DOLE)雇用局が2019年に公表したランキングを引いていました。当時の1位も航空機操縦士で、月給は11万6,714ペソ。2024年の13万7,999ペソまで5年で18%上昇しています(編集部算出)。

変わったのは順位表の中身です。2019年版の上位には土木技術者(月6万8,957ペソ)や金融ディーラー(同8万9,831ペソ)が入っていました。2024年版では、その位置をプログラマーとアクチュアリーが占めています。インフラ建設と金融取引から、ソフトウェアと数理へ。高収入職の中心が5年で入れ替わりました。

IT・通信の給料は、全国平均の2倍から始まる

産業別に見ると、情報通信業の平均月額賃金が4万3,676ペソで全産業の最高、農林水産業の1万4,615ペソが最低です。その差は約3倍あります。

産業別の平均月額賃金(2024年)(単位:ペソ
情報通信
43,676
全産業平均
21,544
農林水産
14,615

フィリピン統計庁 2024年職業別賃金調査。

見てほしいのは、全国平均が情報通信業と農林水産業のどちらに近いか、です。2万1,544ペソは、農林水産業のほうにずっと寄っています。

日本企業がフィリピンで採用するのは、ほぼ例外なく情報通信業か、その隣接領域です。IT-BPM産業は2025年に売上400億ドル(約6兆4,000億円)、雇用190万人に達しました。売上は前年比5%増、雇用は4%増で、いずれも世界平均の3%を上回っています。GDPの8%超を占め、2026年は420億ドル・197万人が見込まれています(業界団体 IBPAP 集計、Philippine Daily Inquirer 報道)。

つまり実際に向き合う相場は、全国平均の2万1,544ペソではありません。情報通信業の4万3,676ペソを起点に、職種と経験で上へ伸びていく市場です。トップ10に並ぶプログラマーの7万〜9万ペソ台も、その延長線上にあります。

賃金は上がっている。日本より速い

DOLEは2026年6月30日、マニラ首都圏の1日あたり最低賃金を85ペソ(約221円)引き上げると発表しました。非農業部門は695ペソ(約1,810円)から780ペソ(約2,030円)へ。2026年7月に60ペソ、2027年1月に25ペソの2段階で実施されます。5年連続の引き上げで、この5年で最大の上げ幅です。直接の対象は約110万人、賃金調整が波及しうる最低賃金超の労働者が約190万人います(ジェトロ報道)。

改定率は12.2%(編集部算出)。同じ2026年、日本の地域別最低賃金は全国加重平均で1,121円から1,176円へ、4.9%の引き上げが目安として示されました(厚生労働省 中央最低賃金審議会、2026年7月28日答申)。日本の前年度は6.3%でしたから、日本側は減速しています。

改定率だけを並べると、フィリピンは日本の2.5倍で上がっています。ただしフィリピンの85ペソは2027年1月までの2段階実施なので、暦年で区切ると差はこれより縮みます。

単位にも注意が必要です。日本の1,176円は時給、フィリピンの780ペソは日額です。マニラ首都圏で最低賃金の1日を働いて得られる額が、日本の最低賃金のおよそ1.7時間分にあたります(編集部算出)。

月給に12を掛けても、年収にはならない

フィリピンには13か月目給与(13th Month Pay)の法定支給義務があります。大統領令851号にもとづき、その年に支払った基本給の12分の1以上を、毎年12月24日までに支給しなければなりません。月給制・日給制を問わず、1か月以上働いた民間の一般従業員が対象です。

これを含めると、平均的な労働者1人あたりの年間人件費はこうなります。

積み上げ年額
基本給2万309ペソ × 12か月24万3,708ペソ
13か月目給与2万309ペソ
諸手当1,235ペソ × 12か月1万4,820ペソ
合計27万8,837ペソ(約72万円)

冒頭の「約67万円」との差は1人あたり年2万309ペソ、約5万3,000円です(編集部算出)。100人を雇えば年約530万円の差になります。

社会保険料(SSS・PhilHealth・Pag-IBIG)の雇用主負担、深夜勤務手当、祝日割増も月額賃金の外側にあります。

見るべきは平均ではなく、分布と上昇率

フィリピンの平均年収が約67万円というのは、正しい統計です。ただしそれは制度の中で働く人の平均であって、募集がかかっている仕事の相場ではありません。日本の478万円と並べて「7分の1で人が採れる」と考えると、実際に採用競争が起きている情報通信業の相場からは倍近く離れたところで見積もることになります。

同じ職種で揃えれば差は1.5〜3.5倍。しかもフィリピンでIT人材は国内で最も高収入な職業の一角で、賃金は日本より速く上がっています。

押さえるべき数字は2つです。採用する職種が属する産業の平均(情報通信業なら月4万3,676ペソ)と、その賃金がどの速さで上がっているか。後者は最低賃金の改定率が先行指標になります。

賃金の数字は毎年動きます。この記事の数字が次にどこで動くのかを、先に置いておきます。

  1. 2027年1月のNCR最低賃金780ペソが予定どおり実施されるか。据え置きも前倒しも、翌年の賃金交渉の基準になります
  2. PSAの次回OWSで、情報通信業の4万3,676ペソがどこまで動くか。同調査は隔年で、公表は例年11月ごろです
  3. IT-BPMの雇用が2026年に197万人へ届くか。人材の供給が止まれば、賃金は平均より速く上がります

SOURCES / 出典

  1. 国税庁一次情報
    令和6年分 民間給与実態統計調査結果についてnta.go.jp
  2. 厚生労働省 中央最低賃金審議会一次情報
    令和8年度地域別最低賃金額改定の目安についてmhlw.go.jp
  3. 厚生労働省 / e-Stat一次情報
    令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)e-stat.go.jp
  4. ジェトロ ビジネス短信
    マニラ首都圏の最低賃金、日額85ペソ引き上げへjetro.go.jp
  5. PhilSTAR Life
    Here are the highest-paying jobs in the PH and their average monthly wages, per PSAphilstarlife.com

参考(本文の補足)

  1. Philippine Daily InquirerIT-BPM industry in PH outpaced global growth in 2025
  2. Labor Law PH LibraryP.D. 851: 13th Month Pay

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