PHILIPPINES STARTUP

ペソが5日ぶりに反発。中央銀行は「63ペソを守る線引きはしない」

KEY POINTS

ニュースの要点
4営業日続けて最安値を更新していたペソが、9月4日に1ドル62.52ペソへ戻した。前日の62.565ペソから4.5センタボの上昇である。アナリストは、中央銀行の介入は63ペソといった特定の水準を守るためではなく、物価に響く急な変動をならすためのものだと指摘している。
この動きの意味
中央銀行は今年の物価上昇率を6.1%と見込み、年末にかけて食品が押し上げる可能性を挙げている。外貨準備は7月末で1,033億ドルと1年半ぶりの低さで、通貨を守るために使える余力そのものが細っている。
今後の注目点
ペソが63ペソに接近するか。中央銀行が実際に介入する場面が出るか。第4四半期に物価がピークをつけるか。外貨準備がさらに減るか。

4営業日続けて最安値を更新していたペソが、9月4日に 1ドル62.52ペソへ戻した。前日の62.565ペソから 4.5センタボの上昇である。

前日は取引時間中に62.69ペソまで下げ、こちらも過去最安を記録していた。

中央銀行は、水準を守らない

焦点は、中央銀行(BSP)がどこで動くかである。Reyes Tacandong & Co. の上級顧問 Jonathan Ravelas 氏の見立ては明確だった。

「ペソ安は物価の押し上げ要因になりうるが、ドル・ペソが63ペソに近づいているというだけの理由で、中央銀行が積極的に介入することはないだろう。介入があるとしても、通常は特定のペソの水準を守るためではなく、行き過ぎた変動をならすためのものだ」

さらに端的にこう述べている。

「中央銀行はまず物価を見て、為替はその次に見る。介入は変動を落ち着かせるためであって、63ペソに線を引くためではない」

同氏は今回のペソ安の原因を、中東の緊張の再燃による原油高、安全資産としてのドル買い、供給網への懸念、天候による物流と商品価格の混乱といった世界的な要因に求めた。

Remolona総裁も以前、強いドルに対して通貨を守ろうとするのは無益で、外貨準備を減らすだけだと述べている。市場に姿は見せるが、急な動きをならすためだとしている。

守る余力そのものが細っている

介入に慎重な理由のひとつが、外貨準備の水準である。

フィリピンの外貨準備高(単位:億ドル)
2026年7月末
1,033
1年前
1,054

7月末の1,033億ドルは1年半ぶりの低い水準。中央銀行は準備を使い切らないよう介入を最小限にとどめるとしている。

7月末の外貨準備は 1,033億ドル(約16兆1,000億円) で、1年半ぶりの低さである。

物価は年末にかけて、もう一段上がりうる

中央銀行が「まず物価を見る」という以上、その物価の見通しが重要になる。

  • 1〜7月の平均は 5.0%
  • 中央銀行の今年の見通しは 6.1%
  • 第4四半期にピークをつける可能性があるとしている

理由として挙げているのが 「スーパーエルニーニョ」による供給の混乱で食品が上がるという筋である。

三菱UFJは年末まで62ペソ台が続くと予想しており、原油が10%上がるとペソが0.9%下がるという関係を示している。原油と食品と為替が、同じ方向に効きうる局面にある。

Regina Capital Development の営業責任者 Luis Limlingan 氏は、ペソが63ペソまで下げた場合、中央銀行はより難しい判断を迫られると指摘した。

換算は1ドル=156円(2026年9月4日時点)で計算した目安である。

SOURCES / 出典

  1. BusinessWorldメディア
    BSP may step in to stem price risks as peso tests fresh lowsbworldonline.com
  2. BusinessWorldメディア
    Peso rebounds on softer dollar after weak databworldonline.com

参考(本文の補足)

  1. Bangko Sentral ng PilipinasBangko Sentral ng Pilipinas

SHARE

#ペソ#BSP#為替介入#外貨準備#インフレ#スーパーエルニーニョ

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS
市場分析

フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】

PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。

トレンド

フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場

フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。

フィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない

フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。