PHILIPPINES STARTUP

電子ウォレット各社が手数料規制に反論、GCash「10ペソが限界」

FinTech

KEY POINTS

ニュースの要点
マニラで開かれたASEAN Tech Summitの討論で、電子ウォレット各社が規制のあり方に注文を付けた。GCashを運営するG-Xchangeの最高執行責任者Barbie Dapul氏は、送金手数料を下げられるのは10ペソ(約26円)までで、それ以下にするとセキュリティと安定性の費用をまかなえないと述べた。
この動きの意味
当媒体は2日前、中央銀行が手数料の上乗せを制限した結果、送金件数が7か月で2.55倍になったことを伝えた。利用者側から見れば成功だが、事業者側から見ると収益源が消える。同じ規制の両面が同時に出ている。
今後の注目点
BSPが事業者側の主張を受けて運用を調整するか。電子ウォレットが送金手数料以外のどこで採算を取り直すか。銀行と電子マネー事業者に別の規制を適用する議論が進むか。

マニラで開かれた ASEAN Tech Summit の討論で、電子ウォレット各社が規制のあり方に注文を付けた。消費者の利益だけを見た政策になっているのではないか、という懸念である。

「ゼロにしろとは書かれていない」

GCash を運営する G-Xchange Inc. の最高執行責任者 Barbie Dapul 氏が挙げたのは、中央銀行(BSP)の通達だった。他行あて送金の手数料を可能なかぎりゼロに近づけるよう促す内容である。

Dapul氏は、GCashが下げられるのは 10ペソ(約26円)までだと述べた。理由は、サイバーセキュリティと稼働の安定性を保つための費用を払い続ける必要があるためである。

通達には、価格は公正でなければならない、合理的でなければならないと書かれている。必ずしもゼロでなければならないとは書かれていない。

そのうえで、電子ウォレットが事業を続けられるだけの余地を残す規制を求めた。

同氏はまた、電子ウォレットと従来型の銀行を同じ規制で扱うのは公平ではないとも述べている。銀行は預金などから収益を得られるが、電子ウォレットの収益構造は違う、という主張である。GCashのような事業者は、銀行口座を持たないフィリピン人が金融サービスに触れる入り口になっている点も挙げた。

Tala と Maya Bank も同じ方向

Tala の対外担当ディレクター Arianne Ferrer 氏は、フィンテックがデジタル金融を押し広げる役割を担っている以上、事業者が稼げることが次の成長につながると述べた。

消費者を中心に置いた共同規制が要る。金融包摂の目標、つまりアクセスと選択肢と自己決定を広げることと、国内外の投資家にとっての収益性・持続可能性への道筋を、両立させる必要がある。

Maya Bank の社長 Angelo Madrid 氏は、規制には2つの目的があると整理した。取引を安全にして消費者を守ることと、投資家が入ってこられるようにして結果的に消費者の利益にすること。

同じ規制の、反対側

当媒体は2日前、BSPの手数料規制のあとに送金件数が2.55倍になったことを伝えた。2026年1〜7月のInstaPayとPESONetの取引件数は49億7,600万件に達し、1件あたりの平均額は43%下がっている。手数料が小口の送金を止めていたことが数字に出た形だった。

今回の発言は、その反対側にあたる。利用が増えても、1件あたりで受け取る手数料が消えれば、事業者の収益は増えない。

規制が需要を作り、同時に供給側の採算を細くする。この綱引きが、いまフィリピンの決済で起きている。


円換算は2026年8月21日時点のレート(1ドル=159円、1ペソ=2.6円)による目安です。

SOURCES / 出典

  1. The Philippine Starメディア
    E-wallets seek rule parity with consumersphilstar.com
  2. PHILIPPINES STARTUPメディア
    フィリピンの銀行間送金、7か月で件数2.5倍。手数料規制が小口を動かしたphilippines-startup.biz

SHARE

#電子ウォレット#GCash#Maya#規制#手数料

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS
企業分析

600社が使ったSalariumは2023年にサービスを無期限停止、倒産も解散もしていない

フィリピンで勤怠から給与の振り込みまでを1つで担っていたSalariumは、2019年時点で約600社が使い、2021年までに2万社へ広げると語っていた会社でした。2023年8月に利用企業が資金を引き出せなくなり、12月31日にサービスを無期限で停止します。ただし倒産も解散もしていません。法人はいまも登記に残ったままです。何が起きたのかをたどります。

三井住友は、なぜフィリピンの同じ財閥に5年で4回も出資したのか

日本の三井住友グループが、フィリピンで5年に4回、同じ企業グループの会社に出資しています。銀行に3回、そのリース会社、そして風力発電会社。フィリピンでは外国企業が銀行を100%買えるのに、三井住友は4分の1弱で止めています。買い取るつもりがないなら、何を狙っているのか。会社そのものより、その財閥が持つ顧客基盤でした。

2025年のフィリピン最大の資金調達は5億円。それを超えるお金が国外から来る理由

Forbes Asiaの「100 to Watch」に、フィリピンから2社が入りました。並べてみると、フィリピンで大きな資金を集めた会社には共通点があります。お金を出しているのが、ほぼ全部フィリピンの外の投資家です。理由は起業家の考え方ではなく、国内のベンチャーファンドの大きさにありました。