BSPが政策金利を5%へ引き上げ、ペソは1ドル61.888の最安値に沈む
KEY POINTS
- ニュースの要点
- BSPは8月27日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ、5.00%とした。4月以降3会合連続で、累計の引き上げ幅は0.75%になる。同日ペソは1ドル61.888ペソで引け、7月24日の61.847ペソを超えて過去最安値を更新した。
- この動きの意味
- 今回の利上げは足元の物価ではなく、スーパーエルニーニョと最低賃金引き上げという先の要因に対する予防措置である。BSPは2026年のインフレ見通しを下げる一方、2027年を4.5%から5.4%へ大きく引き上げた。物価の山を来年に見込んでいるということで、フィリピンで事業を持つ企業の調達コストは長引く。
- 今後の注目点
- 10月22日と12月17日の残り2回の決定会合で追加利上げがあるか。パシッグ地裁の一時差止命令で止まっている首都圏の最低賃金引き上げがどう決着するか。9〜11月に「強い」と予想されるエルニーニョが実際に農業生産をどれだけ削るか。
フィリピン中央銀行(BSP)の金融政策決定会合は8月27日、政策金利にあたる翌日物リバースレポ金利を0.25%引き上げて 5.00% とした。1年以上ぶりの高さで、2025年6月の5.25%以来の水準になる。翌日物の預金ファシリティ金利は4.50%、貸出ファシリティ金利は5.50%にそれぞれ引き上げた。
4月に始まった一連の引き締めは、6月、8月と3会合連続になった。累計の引き上げ幅は0.75%である。BusinessWorld が事前に集めたアナリスト24人のうち19人が0.25%の利上げを予想しており、市場の想定どおりの決定だった。
見ているのは足元ではなく2027年の物価
BSPが挙げた理由は、変動の激しい石油価格、迫る「スーパーエルニーニョ」、そして最低賃金引き上げの可能性の3つである。いずれもまだ物価に出ていない。エリ・レモロナ総裁は会見で「今日の利上げは、我々が想定しているリスクに対する予防的な動きだ」と述べ、エルニーニョによる食品価格への影響と最低賃金の追加引き上げを名指しした。
それは見通しの数字にも表れている。BSPは2026年のインフレ見通しを引き下げる一方で、2027年を大幅に引き上げた。
| 消費者物価の見通し | 2026年 | 2027年 | 2028年 |
|---|---|---|---|
| 8月27日時点 | 6.1% | 5.4% | 3.3% |
| 前回時点 | 6.4% | 4.5% | 3.1% |
BSPの経済調査部門を率いる Lara Romina E. Ganapin 氏は、物価上昇率は2026年第4四半期にピークを打ち、2027年第4四半期に許容範囲へ戻ると見ていると説明した。BSPは物価の山を、今年ではなく来年に置いている。
エルニーニョについては、フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)が9〜11月に「強い」エルニーニョ、10月〜翌1月に「非常に強い」エルニーニョへ発達する可能性を示している。農業省は、この規模のエルニーニョが起きれば農作物・畜産・漁業の生産が20〜30%減ると試算する。米の生産減と輸入価格の上昇を通じて物価に効いてくる、というのがBSPの読みである。
最低賃金は別の不確実性である。首都圏では日額85ペソ(約220円)を2回に分けて引き上げる決定が出ており、第1弾の60ペソは7月25日に実施済み、第2弾の25ペソは2027年1月20日の予定だった。ただしパシッグ市の地方裁判所が20日間の一時差止命令を出し、実施は止まっている。
ペソは1ドル61.888ペソ、年初来5.01%安
決定と同じ日、ペソは1ドル61.888ペソで引けた。前日の61.65ペソから23.8センタボ下落し、7月24日に付けた61.847ペソの記録を塗り替えた。銀行協会(Bankers Association of the Philippines)のデータによる。2025年12月29日の58.79ペソからは3.098ペソ、率にして 5.01% の下落である。取引額は17億9,000万ドルで、前日の19億100万ドルから減った。
下落の引き金は、BSPが2027年のインフレ見通しを引き上げたことそのものだった。ディーラーの1人は「BSPがエルニーニョと賃上げのリスクを理由に2027年のインフレ見通しを上方修正したため、ペソは最安値まで下げた」と説明している。利上げは通常なら通貨を支えるが、今回は「そこまでインフレが強い」という中央銀行の自己申告として受け取られた。
RCBC のチーフエコノミスト Michael L. Ricafort 氏は、引き締め姿勢と追加利上げの示唆はペソを支える材料になり得ると見る。ディーラーは翌日のペソが62ペソを試す可能性を指摘した。
2.3%成長との綱引き
難しいのは、引き締めている相手の景気が弱いことである。第2四半期の実質GDP成長率は 2.3% で、コロナ禍からの回復後で最低だった。第1四半期の2.8%から減速し、上半期は2.6%にとどまる。洪水対策事業をめぐる不正問題の影響が公共投資と建設に残り、中東情勢による物価上昇が家計の消費を削った。
それでもBSPは、第4四半期には成長が回復し、来年には本格的に戻ると見ている。レモロナ総裁は「成長の基礎的条件はまだ整っている。成長が動き出せば、我々も動く」と述べた。追加利上げについては「もう必要ないことを願っている」としつつ、「インフレ率を目標まで下げるために必要なだけ引き締める」とも言っている。
見方は割れる。アテネオ大学経済研究開発センターの上席研究員 Ser Percival K. Peña-Reyes 氏は今回の決定を「リスク管理の動き」と評したうえで、「5%という水準は正当化できるが、現状でBSPが取り得る上限とみなすこともできる」と述べた。同氏は8月会合では据え置きを予想していた。「第2四半期のGDPがすでに2.3%しか伸びていない以上、さらに強い引き締めのコストは、インフレ抑制で得られる限界的な便益を上回りかねない」
残る決定会合は10月22日と12月17日の2回である。
本記事のペソ建て金額は 1ペソ=約2.6円(2026年8月21日時点)で換算した。ペソの対ドル相場そのものが論点となる箇所は換算していない。
SOURCES / 出典
- BusinessWorldメディアBSP raises key interest rate to 5%bworldonline.com
- BusinessWorldメディアPeso tumbles to new all-time low on near-term inflation risksbworldonline.com
- The Philippine StarメディアBSP policy rates hiked by 25 bpsphilstar.com
- Philippine Daily InquirerメディアBSP raises policy rate to 5%; peso sinks to new lowbusiness.inquirer.net
参考(本文の補足)
- Bangko Sentral ng PilipinasBangko Sentral ng Pilipinas(中央銀行)
- PAGASAPAGASA(フィリピン大気地球物理天文局)
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