初のガス火力容量入札に14件、3大財閥がそろって名乗り
KEY POINTS
- ニュースの要点
- エネルギー省(DOE)が9月30日付の通知で、初の中間負荷用天然ガス容量入札の事前資格通過者を公表しました。10社が14案件を提案しており、募集容量は3,840メガワットです。
- この動きの意味
- 最大の提案はラソン氏のPrime Infrastructure Capitalで、ガス火力4基の合計2,520メガワットです。同社は昨年、ロペス系First Genの天然ガス資産の6割を500億ペソで取得しました。パンギリナン氏・アボイティス氏・アン氏の3者が支える LNGPH も、Excellent Energy Resourcesを通じて3案件を出しています。
- 今後の注目点
- 応札締切が2027年第1四半期へずれた影響。ガス入札の上限価格がいつ示されるか。10月27日の事前説明会。落札時期が年内から来年へずれるか。
フィリピンで初めての、中間負荷用の天然ガス容量入札が動き始めました。
エネルギー省(DOE)が9月30日付の通知で事前資格の通過者を公表し、10社・14案件が通りました。募集容量は 3,840メガワットです。
PhilSTARは募集容量を3,800メガワットとしており、媒体間でわずかに食い違います。
誰が出しているか
| 提案者 | 案件 | 容量 |
|---|---|---|
| Prime Infrastructure Capital(ラソン氏) | Sta. Rita、Sta. Maria、San Lorenzo、San Gabriel | 合計 2,520メガワット |
| Excellent Energy Resources(LNGPH) | バタンガス第2期、イロイロ、ビサヤの新設案 | 非公表 |
| Cordova Power Generation | ルソン、セブ、パナイ | 非公表 |
| Panasia Energy | バタアン複合火力 | 非公表 |
| Therma Cebu Gas-to-Power | トレド | 非公表 |
| Quezon Power | サンフランシスコ複合火力 | 非公表 |
| Vires Energy | 天然ガス発電案件 | 非公表 |
Prime Infraの内訳は、Sta. Rita 1,000メガワット、Sta. Maria 600メガワット、San Lorenzo 500メガワット、San Gabriel 420メガワットです。同社は昨年、ロペス系First Gen Corp.の天然ガス資産の 60%を500億ペソで取得しており、今回はその資産を束ねて出す形になります。
LNGPHは、Meralco PowerGen、Aboitiz Power、San Miguel Global Powerの3社が支える事業体です。昨年、バタンガスの一体型液化天然ガス施設をめぐって 33億ドルの契約を結んでいます。
締切が1年近くずれた
今回の報道で最も実務に効くのが、日程の変更です。
LNGPH社長兼CEOのYari A. Miralao氏が水曜に記者に明かしたところでは、応札の締切が 10月31日から2027年第1四半期へ移りました。「政府が補足の入札書類を出し、応札の締切が今年の10月31日から来年の第1四半期へ移ったと述べた」
事前説明会は10月27日に予定されていますが、これもガス入札の上限価格(Gas Auction Threshold price)が示されることが前提です。
事前資格の通過は落札を保証しません。デイリー・トリビューンによれば、通過者には不備の修正のために2営業日の是正期間が一度だけ与えられ、その後も入札要件を満たして競争する必要があります。入札は電子的な仕組みで行われます。
なぜ中間負荷なのか
この入札の狙いは、電源構成の穴を埋めることです。
中間負荷(mid-merit)とは、ベースロードのように常時動かすのでも、ピーク時だけ動かすのでもない、需要に合わせて出力を変える運転のことです。太陽光や風力の出力が落ちたときに、素早く補う役割を担います。
エネルギー長官のSharon Garin氏は、フィリピン・エネルギー投資フォーラムで、この入札が電源構成の多様化を支えると述べました。天然ガスは現在、国内の電源構成のおよそ 14% を占めます。
DOEはルソン向けに2,900メガワットの天然ガス容量を目標としており、うち1,400メガワットは今年から供給が始まる予定です。
文脈
この入札は、ビサヤの停電とも無関係ではありません。Excellent Energy Resourcesの3案件のうち2件は、ビサヤ(イロイロと新設案)です。発電が足りない地域に、ガス火力の新設が検討されているということになります。
一方でセミララ鉱山の運営契約をめぐる入札が揺れており、DOEは石油依存を2040年までに半減させる計画も掲げています。石炭から天然ガスへ、という移行の筋書きのなかに、この3,840メガワットは置かれています。
換算は1ペソ=2.49円(2026年9月4日時点)で計算した目安である。本文の金額は過去の取引額であり、記事の主題ではないため円換算していない。
SOURCES / 出典
- BusinessWorldメディアPrime Infra, LNGPH prequalify for first gas capacity auctionbworldonline.com
- PhilSTARメディアTycoons join race for 1st gas auctionphilstar.com
- Daily TribuneメディアNatural Gas Auction Advances with 14 Projects Competing for Power Capacity Contractstribune.net.ph
同じカテゴリーのNews
RELATEDこの動きを読み解くInsights
INSIGHTSフィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場
フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。
フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】
PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。
フィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない
フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。



