8月の貿易赤字が15か月ぶりの小ささ、半導体の輸出が73.5%増
KEY POINTS
- ニュースの要点
- 8月の財の貿易赤字は前年同月比3.5%減の38億5,000万ドルで、15か月ぶりの小ささでした。7月の63億5,000万ドルからは39.3%縮んでいます。輸出が27.8%増の91億1,000万ドルと、1991年の統計開始以来で最高になったためです。
- この動きの意味
- けん引役は電子製品で、輸出全体の68.1%を占め59.9%増。うち半導体は73.5%増の52億4,000万ドルでした。AI向けの投資が世界的に電子部品の需要を押し上げています。輸入は16.6%増の129億6,000万ドルでした。
- 今後の注目点
- 半導体依存の構造がどこまで続くか。1〜8月で415億6,000万ドルに膨らんだ累計赤字。原油高が輸入額をどこまで押し上げるか。政府見通し(輸出3%増・輸入5%増)との乖離。
8月の貿易赤字が、15か月ぶりの小ささになりました。
| 項目 | 2026年8月 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 貿易赤字 | 38億5,000万ドル | -3.5% |
| 輸出 | 91億1,000万ドル | +27.8% |
| 輸入 | 129億6,000万ドル | +16.6% |
7月の赤字63億5,000万ドルからは39.3%縮みました。フィリピンの貿易収支は、2015年5月に6,495万ドルの黒字を出して以来、赤字が続いています。
輸出の91億1,000万ドルは、統計庁(PSA)の系列が始まった1991年以降で最高の水準です。
半導体がすべてを動かした
改善の中身は、ほぼ一つの品目に集中しています。
| 品目 | 8月の輸出額 | 前年同月比 | 輸出全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 電子製品 | 62億ドル | +59.9% | 68.1% |
| うち半導体 | 52億4,000万ドル | +73.5% | (電子製品の57.6%) |
| 鉱物 | 3億9,354万ドル | +1.8% | 4.3% |
アジア太平洋大学経済学部の准教授で元学部長のFrancisco Cid L. Terosa氏は、要因をAIに求めています。
「輸出の急増は、電子製品とりわけ半導体に対する世界の需要が急速に伸びていることに帰せられる。これは米国など主要経済におけるAIと関連技術への積極的な投資にさかのぼることができる」
Pantheon Macroeconomicsの新興アジア担当チーフエコノミストMiguel Chanco氏は、半導体輸出の伸びがフィリピンの世界的な電子部品の価値連鎖における役割の高まりを示すとしつつ、韓国のような主要輸出国にはまだ追いついていないと述べました。
「構造的な改善ではない」
ただし、この数字を手放しで喜ぶ見方は少数派です。
Chinabank Researchは「8月の貿易収支の改善は心強いが、依然として高度に集中した電子部品の好況によるものであり、対外競争力の広範な改善によるものではない」と指摘しました。同社はまた、原油価格が高止まりし電子部品の輸入も強いなかで、輸出主導の改善を続けるのは難しいかもしれないとしています。
Terosa氏も「我が国の輸出の実績は、変動の激しい半導体産業に大きく依存したままだ」「今後数か月に世界の供給網に衝撃があれば、我が国の財の貿易の地位は確実に損なわれる」と述べています。
実際、累計で見ると構図は変わります。
| 1〜8月 | 金額 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 貿易赤字 | 415億6,000万ドル | +26.3% |
| 輸出 | 640億4,000万ドル | +14.8% |
| 輸入 | 1,056億ドル | +19.1% |
開発予算調整委員会(DBCC)は今年の財の輸出を3%増、輸入を5%増と見込んでいますが、実績はどちらも大きく上回っています。
輸入の中身も電子部品
見落とせないのが、輸入側の構成です。
8月の最大の輸入品目も電子製品で、61.4%増の45億1,000万ドル。輸入全体の34.8%を占めます。輸出で稼いでいる半導体の多くは、部材を輸入して組み立て・検査する工程を経ているということです。
仕向地では米国が21億7,000万ドル(23.8%)で首位。香港15億7,000万ドル、中国10億5,000万ドル、日本7億449万ドル、台湾5億1,601万ドルと続きます。輸入元の首位は中国で29億4,000万ドル(23%)でした。
読み方
この数字は、フィリピン経済の二面性を示しています。
上期の経常赤字はGDP比6.4%まで広がり、8月の国際収支も5億9,600万ドルの赤字でした。そのなかで、半導体という一本の柱だけが強く立っています。
後工程の受託に強みを持つフィリピンにとって、AI向け需要は追い風です。ただし一本足であることは、裏返せば世界の需給が反転したときの脆さでもあります。
換算は本文の金額がすべてドル建ての貿易統計であり、円に直すと前年比の読み取りを妨げるため行っていない。
SOURCES / 出典
- BusinessWorldメディアPhilippines' August trade gap narrows to 15-month lowbworldonline.com
- PhilSTARメディアTrade balance improves as deficit narrows to lowest in 15 monthsphilstar.com
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