PHILIPPINES STARTUP

電気のない10万1,468世帯へ、23州369地区でマイクログリッドの入札

KEY POINTS

ニュースの要点
エネルギー省が、電気が届いていない10万1,468世帯を対象に、マイクログリッド事業者を選ぶ競争入札の準備を進めています。対象地区は23州の369か所で、いずれも系統の届かない地域や供給が不十分な地域です。
この動きの意味
フィリピンの電化率は94.93%に達していますが、2025年末時点で約153万世帯がまだ電気を使えません。残っているのは系統を延ばす費用が見合わない場所ばかりで、次官は予算の制約を踏まえると全世帯の電化は2043年になるとしています。
今後の注目点
入札の日程と条件がいつ示されるか。369地区のうち何か所が実際に落札されるか。事業者が採算を取れる料金設定になるか。2043年という見通しが前倒しされるか。

フィリピン・エネルギー省(DOE)が、電気が届いていない10万1,468世帯を対象に、マイクログリッドの事業者を選ぶ競争入札の準備を進めています。

対象は 23州の369地区です。系統がまったく届いていない地域と、届いてはいるが供給が不十分な地域が含まれます。

対象世帯10万1,468世帯
対象地区369地区
対象州23州(アンティケ、バシラン、ボホール、カガヤン、セブ、パラワン、スールー、タウイタウイ、サマール、南レイテなど)

電化率94.93%の、残りの5%

数字の見え方に注意が要ります。フィリピンの電化率は 94.93% で、水準としては高い。ところが2025年末時点で、なお 約153万世帯が電気を使えません。

残っているのは、系統を延ばす費用が見合わない場所です。離島、山間部、そして紛争の影響が残る地域。バシラン、スールー、タウイタウイといった州名が並ぶのは、そのためです。

だからマイクログリッドが出てきます。大きな送電網につなぐのではなく、その集落の中で発電して配る仕組みです。

エネルギー省のSharon Garin長官は「電気は、明かりをつけること以上の意味を持つ」として、教育、生計、医療、通信を挙げました。次官のRowena Cristina Guevara氏は、予算の制約を踏まえると 全世帯の電化は2043年になるとの見通しを示しています。あと17年かかる計算です。

なぜ入札なのか

事業者が勝手に電気を売れるわけではありません。マイクログリッド法(共和国法11646号)が、供給を始める前に競争入札を経ることを義務づけています。今回はその手続きの前段にあたります。

入札の日程や条件はまだ公表されていません。省が先に地区の一覧を出したのは、事業者が技術的な調査や投資の検討を先に始められるようにするためです。地区の一覧は今後の検証で更新される可能性があります。

準備は段階的に進んでいます。カマリネス・スールとパラワンの10地区で詳細な検証が終わり、第2段階として15〜25地区の調査が進んでいます。英国のUK PACTという枠組みが、現地ごとの調査を支援しています。

事業として見ると

規模は大きくありません。10万1,468世帯を369地区で割ると、1地区あたり平均275世帯です。1件ごとの事業としては小さく、しかも場所は離島や山間部です。

それでも制度としては整いつつあります。省は2025年に競争入札の実施細則を改め、手続きの効率と透明性を高めたとしています。

見るべきは 料金の設定です。系統から離れた場所で発電すると単価は上がります。すでにブスアンガ島のように系統から独立した地域では1キロワット時24.92ペソ(約62円)という水準が出ています。事業者が採算を取れて、かつ住民が払える価格に収まるかどうかが、369地区のうち何か所が実際に動くかを決めます。

換算は1ペソ=2.49円(2026年9月4日時点)で計算した目安である。

SOURCES / 出典

  1. PhilSTARメディア
    Over 100K unenergized homes targeted in microgrid auctionphilstar.com
  2. BusinessMirrorメディア
    100K households without electricity to benefit from microgrid programbusinessmirror.com.ph

参考(本文の補足)

  1. フィリピン・エネルギー省Department of Energy

SHARE

#マイクログリッド#電化#DOE#離島#再生可能エネルギー#入札#地方

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS
トレンド

フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場

フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。

市場分析

フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】

PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。

フィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない

フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。