地熱の掘削費を政府が半分負担、17社が申請へ。外れたら返済不要
KEY POINTS
- ニュースの要点
- エネルギー省の100億ペソの地熱デリスキング制度(PGRDF)に17社が関心を示し、うち12社が申請の意思を固めた。探査掘削費の最大50%を政府が転換社債型の融資として負担し、掘削が失敗した場合は返済不要の補助金に切り替わる。
- この動きの意味
- 地熱は天候に左右されない国産のベースロード電源だが、井戸1本で10億円前後を成功保証なしに投じる必要があり、民間が単独では踏み込みにくい。政府がその探査リスクを引き取ることで、輸入石炭への依存を構造から減らしにいく制度である。
- 今後の注目点
- ADBが出す専門家選定の入札の結果と時期。申請した17社の顔ぶれが公表されるか。実際に掘削まで進む案件の数。1件あたりの支援額がどの程度になるか。
地熱の井戸を1本掘っても、蒸気が出るとは限らない。その 外れたときの損 を政府が半分肩代わりする制度に、17社が並んだ。エネルギー省(DOE)のRowena Cristina Guevara次官が明らかにした。
制度の名前は フィリピン地熱資源デリスキング施設(PGRDF)、規模は 100億ペソ(約260億円)である。すでに12社が申請の意思を固めており、「どこかが降りた場合に備えて5社が控えている」(Guevara氏)。社名は公表されていないが、外国資本が一部入っている企業も含まれるという。
「掘る前に半分出す。外れたら返さなくていい」
地熱の難しさは、投資の順番にある。発電所を建てるより先に、資源があるかどうかを確かめるために井戸を掘らなければならない。そしてその井戸は、外れる。
PGRDFの仕組みはこうなっている。
- 探査掘削の費用を政府と事業者で分担する。政府の負担は最大で掘削費の50%
- 政府の負担分は、まず転換社債型の融資として出る
- 掘削が 失敗した場合、その融資は返済不要の補助金に切り替わる
つまり事業者から見ると、当たれば借入、外れれば贈与になる。エネルギー省のSharon Garin長官は「地熱開発は、消費者に1キロワットも届く前に多額の投資を必要とする。PGRDFによって政府が探査段階のリスクを下げ、有望な案件が資源確認から開発へ速く進めるようにする」と説明した。
PhilSTARは1坑あたり 600〜800万ドル(約9億5,000万〜12億7,000万円)、Inquirerは 1,000〜1,200万ドル(約16億〜19億円) と伝えている。どちらもエネルギー省への取材だが幅が一致しない。ここでは両方を併記した。いずれにせよ、成功の保証がないまま1本で10億円前後が出ていく世界である。
運営体制も決まっている。エネルギー省が実施機関として政策と監督を担い、ランドバンクが資金の管理者として個別の融資申請を審査する。両者は昨年12月に協定を結んだ。アジア開発銀行(ADB)は、申請の評価を助ける専門家を選ぶための入札を近く出す。ADB・財務省・経済開発計画省(DEPDev)には、応募企業の一覧がすでに渡っている。
制度そのものは7月、マルコス大統領が議長を務める経済開発評議会で承認された。
世界3位の地熱国が、それでも掘れなかった理由
フィリピンは 米国・インドネシアに次ぐ世界3位の地熱発電国である。2023年時点の設備容量は1,952メガワット。4月時点でエネルギー省は31件の地熱サービス契約を監視しており、その潜在容量は合計1,077.22メガワットとされる。
すでに世界3位でありながら、なぜ政府が身銭を切るのか。理由は、この国の電源構成にある。
| 石炭の輸入依存 | 輸入の95%がインドネシア産 |
| 電気代(家庭用) | Meralcoは1キロワット時14.48ペソ(約38円)。6月時点で国内4番目の高さ |
| 地熱の性質 | 天候に左右されず24時間動く(ベースロード) |
太陽光や風力と違い、地熱は天候に関係なく回り続ける。石炭火力の代わりになりうる数少ない国産電源である。Garin長官の言葉を借りれば、「投資可能な地熱案件の裾野を広げ、電力系統の強靭性を高め、変動する輸入燃料価格への露出を減らす」ための制度である。
国産石炭を混ぜて使う初のターミナル構想も動いているが、そちらは輸入依存を薄めるための対症療法にあたる。PGRDFは、掘削の失敗という民間が飲みたがらないリスクを政府が引き取ることで、国産のベースロード電源そのものを増やしにいくという筋である。
17社が誰なのかは、まだ分からない
現時点で公表されているのは「12社が申請、5社が控え、一部は外国資本と組んでいる」までである。既存の主要プレイヤーとしては、First Gen傘下の Energy Development Corp.(EDC)が地熱で約1,300メガワットを持つ。First Genは8月末にAlliance Globalの施設へ25メガワット超の地熱を供給する契約を結んでおり、地熱の需要側の開拓も進めている。
100億ペソを17社で取り合うとすれば、1社あたりの平均は6億ペソ(約16億円)弱になる。井戸1本ぶんの半額に届くかどうか、という規模である。制度の実効性は、金額よりも「誰が実際に掘るところまで行くか」で決まる。
換算は1ドル=159円、1ペソ=2.6円(2026年8月21日時点)で計算した目安である。
SOURCES / 出典
- The Philippine StarメディアDOE: 17 power firms line up for P10 billion geothermal fundingphilstar.com
- BusinessWorldメディア17 firms eye P10-B geothermal de-risking facilitybworldonline.com
- Philippine Daily Inquirerメディア12 geothermal energy firms seek funding boostbusiness.inquirer.net
参考(本文の補足)
- Land Bank of the PhilippinesLand Bank of the Philippines
- Energy Development CorporationEnergy Development Corporation
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