国内初のデータセンターREIT、10月12日上場へ。売り出しは全額が既存株
KEY POINTS
- ニュースの要点
- ePLDTが国内初のデータセンターREIT「VITRO REIT」を10月12日に上場させる方向で動いている。9月23日に価格を決め、9月25日から10月1日に募集する。調達額は最大242億ペソで、売り出しはすべてePLDTが持つ既存株である。
- この動きの意味
- 稼働中の8拠点・約24メガワットのうち、利益の51%がMakati 2の1拠点から出ている。マニラのデータセンターの空室率が43.6%と域内最高であるなかで既存拠点の稼働率が7割を超えており、供給過剰の市場でも古い拠点には需要が集まっていることを示す。
- 今後の注目点
- 10月12日の上場が実際に行われるか。コーナーストーン投資家の顔ぶれ。想定利回り5.8%が国債利回りとの比較で受け入れられるか。REITから外れた36メガワットのSta. Rosaがいつ組み入れられるか。
PLDT 傘下の ePLDT が、データセンターを束ねた不動産投資信託 VITRO REIT を10月12日に上場させる方向で動いている。国内初のデータセンターREITで、今年最初の新規上場でもある。調達額は最大 242億ペソ(約629億円)。目論見書に記された日程はこうなっている。
- 9月23日価格決定
1株あたり最大11ペソ
- 9月25日〜10月1日募集期間
ePLDT保有株の49%を売り出し
- 10月12日上場
銘柄コードはVITRO
目論見書に記載の暫定日程。市場環境により変わりうる。
引受はUBSのシンガポール支店とBPIキャピタルが務める。
会社に新しい資金は入らない
この上場でひとつ確認しておくべき点がある。売り出されるのはすべて既存株(セカンダリー)である。つまり ePLDT が持っている株を投資家に売るのであって、VITRO REIT という会社に新しい資金が入るわけではない。
もっとも、REIT法(2009年)は売却代金の再投資を義務づけており、VITRO REIT も再投資計画の承認を受けている。PLDT側から見れば、デジタルインフラを切り出して価値を顕在化させ、バランスシートを立て直す動きにあたる。BusinessWorldは調達目標を最大4億ドル(約636億円)と伝えている。
同じ構図は今年もう1件ある。GCashを運営するMyntの上場も、923億ペソ(約2,400億円)のうち会社に入るのは160億ペソ(約416億円)だけで、残りは既存株主への支払いだった。フィリピンの大型上場は、資金調達というより保有者の入れ替えの場になりつつある。
8か所で24メガワット、利益の半分は1か所から
REITに入るのは、稼働中の 8拠点・合計約24メガワットである。一般家庭2万世帯ぶんの電力に相当する規模で、マニラ首都圏、クラーク、セブ、ダバオに分散している。最も古い VITRO Pasig は2000年に建った。
ただし収益の分布は、拠点数ほど分散していない。
- VITRO Makati 212.3MW・稼働率76.4%
- 残り7拠点Pasigを加えた上位2拠点で7割超
Makati 2 は2027年も純利益の約47%を占める見込み。Pasig単独の比率は公表されていない。
拠点ごとの稼働率(オフィスでいう入居率)を並べると、差はさらにはっきりする。
| 拠点 | 稼働率 |
|---|---|
| VITRO Pasig | 78.6% |
| VITRO Makati 2 | 76.4% |
| VITRO Clark | 74.3% |
| VITRO Cebu 2 | 62.0% |
| VITRO Cebu 1 | 52.7% |
| VITRO Makati 1 | 48.7% |
| VITRO Davao | 42.5% |
| VITRO Parañaque | 40.8% |
全体では2025年時点で 70.4%、2027年に73.7%まで上がる想定である。上位3拠点は7割台で埋まっている一方、下位4拠点は半分前後が空いている。
なお、開発中の 36メガワットの VITRO Sta. Rosa は今回のREITに入らない。REIT法上、収益を生む不動産として認められる段階に至っていないためで、将来の成長の受け皿として外に置かれている。
空室率43.6%の市場で、7割埋まっているという意味
フィリピンのデータセンター市場は、いま供給が需要を追い越している。マニラのデータセンターの空室率は上半期に43.6%で、アジア太平洋で最も高い。その市場で稼働率70.4%という数字は、既存の大手が持つ古い拠点に需要が集まり、新しく建った容量が余っている構図を示している。
VITROとePLDTを合わせると、フィリピンの第三者向けデータセンター容量の 約33% を占める(Analysys Mason調べ)。2位はGlobe系のST Telemedia Global Data Centres Philippinesで26%である。
「10月12日」が動くかどうか
証券取引所のRamon Monzon社長は先週、Bloomberg TVのインタビューで「VITRO REITは、いくつかのコーナーストーン投資家との交渉をまとめている最中なので、まさにそのために上場日を後ろにずらした」と述べている。
チャイナバンク・キャピタルのJuan Paolo Colet氏は、後ろ倒しを前向きに解釈する。「国内初のデータセンターREITなので、募集を売り込んでより良い価格発見を確保するのに手間がかかるのは自然だ」
Globalinks証券のToby Allan Arce氏は、REITの上場が金利に敏感であることを指摘した。「REITの新規上場はとくに金利、債券利回り、そして他の収益資産と比べて投資家が求める利回りに左右される。本質的に魅力のある資産でも、投資家が不十分と考える利回りで市場に来れば苦戦しうる」
想定配当利回りは1株11ペソの上限価格で 2026年5.8%、2027年6.15% とされている。10年物国債の利回りが7%を超えていた7月の水準と並べると、この比較がなぜ効くのかが分かる。
新規上場が細り、上場企業が去っていくフィリピン市場にとって、国内初の資産クラスが投資家に受け入れられるかどうかは、10月の試金石になる。
換算は1ドル=159円、1ペソ=2.6円(2026年8月21日時点)で計算した目安である。
SOURCES / 出典
- BusinessWorldメディアAnalysts cite deal timing, market conditions for VITRO REIT listingbworldonline.com
- InsiderPHメディアPLDT’s VITRO REIT files for October IPO with yields topping 6%insiderph.com
- DataCenterDynamicsメディアPLDT files to establish and float data center REIT in Philippinesdatacenterdynamics.com
参考(本文の補足)
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