PHILIPPINES STARTUP

マニラのデータセンター、空室率43.6%はアジア太平洋で最も高い

KEY POINTS

ニュースの要点
Cushman & Wakefieldの集計で、マニラのデータセンターの開発計画が2026年上期に13%縮んで97メガワットになった。建設中は22メガワットから5メガワットへ減り、稼働中の設備は22%増えて90メガワットになった。コロケーションの空室率は43.6%である。
この動きの意味
43.6%という空室率は、調査対象となったアジア太平洋15市場のうち最も高い。同じ期間、域内全体では7,103メガワットが計画に加わり、合計は2万6,455メガワットになった。マニラだけが逆を向いている。AIの需要が域内の建設を押し上げるなかで、この差は無視できない。
今後の注目点
新規案件の発表が戻るか。空室率が43.6%からさらに下がるか。中部ルソンで計画されているPax SilicaのAIデータセンターが実際に動くか。

不動産サービスの Cushman & Wakefield がまとめたアジア太平洋のデータセンター調査で、マニラの開発計画が2026年上期に 13%縮んだ ことが分かった。

建設中が22メガワットから5メガワットへ

マニラの開発計画は 97メガワット になった。内訳は建設中が5メガワット、計画段階が92メガワットである。

区分2025年下期2026年上期
建設中22メガワット5メガワット
計画段階—92メガワット
開発計画の合計—97メガワット(−13%)
稼働中のIT容量—90メガワット(+22%)

建設中が大きく減ったのは、多くの案件が完成して稼働に移ったためである。ただし同社は、新しい案件の発表が、完成した分を埋め合わせられていない と指摘する。

稼働中の設備は増えており、マニラは16の事業者が運営する28か所のデータセンターを持つ。

空室率43.6%は域内で最も高い

供給が増えたにもかかわらず、コロケーション(他社の機器を預かる形態)の空室率は前期の48%から 43.6% へ改善した。需要が新しい容量の一部を吸収したことになる。

それでも水準は高い。43.6%は、この報告書が個別に扱ったアジア太平洋15市場のうち最も高い。

市場空室率
マニラ43.6%
ホーチミン市34.8%
パース34.3%
デリー首都圏10.9%
オークランド6.4%
台北5.6%

主要市場はさらに低く、ジョホールの0.7%からバンコクの22.1%までの範囲にある。

域内は逆に急拡大している

マニラの縮小は、地域全体の動きと反対を向いている。

アジア太平洋では上期に 7,103メガワット が開発計画に加わり、合計は 2万6,455メガワット になった。うち4,764メガワットが建設中、2万1,691メガワットが計画段階である。上期には1,372メガワットが新たに稼働し、域内の空室率は10.9%から 10.3% へ下がった。

同社は、AIとクラウドの需要がこの拡大を支えているとしている。

中部ルソンでは、AI向けのデータセンターを計画する Pax Silica の案件が動いている。政府は同社の申請について「迅速かつ公正な処理」を約束したと報じられた。計画が縮む市場のなかで、突出した1件が進もうとしているという構図になる。

当媒体は8月に、ケソン市のオフィスの55%が未契約であることを伝えた。建ててから埋まるまでに時間がかかるという点で、オフィスとデータセンターは同じ形をしている。


円換算は2026年8月21日時点のレート(1ドル=159円、1ペソ=2.6円)による目安です。

SOURCES / 出典

  1. BusinessWorldメディア
    Manila data center pipeline shrinks 13% as new projects lagbworldonline.com
  2. Philippine Daily Inquirerメディア
    How Pax Silica's AI data centers could heat Central Luzon farmsbusiness.inquirer.net

SHARE

#データセンター#AI#空室率#Cushman & Wakefield

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS
市場分析

英語と安さで選ばれたフィリピンの画面に、世界の口座と診療記録が映っている

フィリピンのコールセンターが選ばれてきた理由は、英語が通じて安いことです。業界団体自身の資料がそう書いています。ところがそこに届いているのは、世界の銀行と医療のユーザーからの問い合わせでした。選ばれた理由と任されている中身が噛み合っていません。2年で2度、オーストラリア企業の顧客情報がマニラを経路に抜かれ、アナリストは「顧客はリスクを拠点の所在地で値付けする」と言います。

企業分析

マニラで見つけた課題を4か国に広げたKitaが、シードで約7億円を集めた理由

新興国の貸し手向けに与信審査を自動化するKitaが、シードで450万ドル(約7億円)を調達しました。創業者はマニラ出身で、フィリピンの貸し手と働くなかで課題を見つけています。ただし会社はサンフランシスコにあり、稼働しているのはフィリピン・インドネシア・メキシコ・米国の4市場。公開されている顧客6社のうち、フィリピンの貸し手は1社です。この設計の違いが、値段の付き方を変えています。

トレンド

フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場

フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。