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最低税率15%の上乗せ課税でフィリピンが年244億ペソ。対象の24%は日本の企業グループ

KEY POINTS

ニュースの要点
財務省は、国際的な最低法人税率の国内版であるQDMTT(適格国内最低上乗せ税)の導入で年平均244億ペソの増収になると試算した。連結売上7億5,000万ユーロ以上で、その国での実効税率が15%を下回る多国籍企業グループが対象になる。フィリピンでは1,001グループ・4,037社が該当する。
この動きの意味
親会社の国別では日本が24%と最も多く、米国22%、ドイツ7%、英国6%が続く。所得税の免除など所得を基準にした優遇を受けている企業は、税率が15%を下回った分を上乗せで課税されるため、優遇の利益が投資家に届かなくなる可能性がある。
今後の注目点
年内に法案が成立するか。適用が2027年課税年度で確定するか。所得ベースの優遇に代わる制度が用意されるか。対象企業がフィリピンでの投資判断を変えるか。

フィリピン財務省が、国際的な最低法人税率の国内版にあたる制度で、年平均 244億ペソ(約634億円)の増収が見込めると試算した。9月2日の関係者向け説明会で、財務次官補の Euvimil Nina Asuncion 氏が明らかにした。

制度の名前は QDMTT(適格国内最低上乗せ税) である。多国籍企業グループの、その国での実効税率が15%を下回る場合、足りない分を上乗せして課税する仕組みで、国際的な最低税率(グローバルミニマム課税)の枠組みの国内部分にあたる。

対象の親会社は、日本が最も多い

誰が対象になるのかが、この制度の要点である。

条件
規模直前4会計年度のうち 2年以上で連結売上が7億5,000万ユーロ以上
税率その国での 実効税率が15%未満

財務省が2021〜2024年のORBISのデータで数えたところ、フィリピンでは 1,001の多国籍企業グループが対象になり、その 4,037社の子会社が国内で事業をしている。

対象となる多国籍企業グループの親会社の国1,001グループ
24%
22%
7%
6%
41%
  • 日本最多
  • 米国
  • ドイツ
  • 英国
  • その他上記4か国以外

財務省がORBISの2021〜2024年のデータで集計。「その他」は公表された4か国の合計から編集部が差し引いて算出した。

親会社の所在国では、日本が24%で最も多い。米国が22%、ドイツが7%、英国が6%と続く。つまりこの制度の影響を最も広く受けるのは、日本の企業グループのフィリピン子会社である。

業種別では、子会社の 10.4%が製造業、次いで卸売・小売と自動車・二輪の修理が7.68%、金融・保険が5.33%だった。

Asuncion氏は「ただしこれらの数字は現時点で入手できるデータにもとづくもので、今後さらに更新されうる」と断っている。

増収額は年によって振れる

財務省が示した増収の試算は、年によって幅がある。

QDMTTを導入していた場合の増収の試算(単位:億ペソ
2021年
325
2023年
256
2022年
212
2024年
183

財務省が過去のデータにあてはめて算出した。4年間の平均が244億ペソにあたる。

2021年が325億ペソ(約845億円)で最も大きく、2024年は183億ペソ(約476億円)だった。4年の平均が244億ペソである。

「優遇はもらえるが、利益は投資家に残らない」

財務省自身が警告している点が、この記事でいちばん重要である。

Asuncion氏はこう述べた。「グローバルミニマム課税は、この国が提供している一部の優遇税制の競争力に影響しうる。GloBEルールのもとでは、一部の優遇、とくに所得を基準にした優遇の効果が、対象となる多国籍グループについては薄まりうる

さらに踏み込んだ説明がこうである。

優遇によって実効税率が15%を下回れば、その税の利益は上乗せ課税で相殺されてしまうかもしれない。実質的には、優遇は与えられ続けるが、その利益はもはや投資家に完全には帰属しなくなる

財務省が名指しした対象には、所得税の免除(income tax holiday)5%の特別法人税 が含まれる。フィリピンが外資誘致に使ってきた中心的な仕組みである。

どういうことか

たとえば、経済特区に入って所得税の免除を受け、実効税率が5%になっている日本企業の子会社があるとする。QDMTTが入ると、15%との差である10%分を フィリピン政府に上乗せで納めることになる。免除の制度自体は残るが、手元に残る額は15%課税と同じになる。優遇の分は、投資家ではなく政府に移る

進め方と時期

財務省が示した段取りは次のとおりである。

  1. 年内に法案が成立し、1月1日に施行されれば、徴収の開始は 2029年から
  2. 適用は暫定的に 2027年課税年度から
  3. 対象企業は、施行日または対象になった課税年度の末から 6か月以内に登録
  4. 最初の申告と、GloBE情報申告書(GIR)は、適用初年度の終了から18か月目までに提出

「今年通して1月1日に施行できれば、2029年から徴収を始められる。準備の期間を取れるように間を空けている」(Asuncion氏)

日本企業にとっての読みどころ

フィリピンの誘致策は、PEZAの経済特区に入って所得税の免除を受ける形が中心だった。上半期のPEZA承認額は1,407億ペソ(約3,660億円)で94.42%増と伸びている。

そこへQDMTTが入ると、連結売上が7億5,000万ユーロを超える規模の企業にとっては、税の優遇そのものが投資判断の材料でなくなる。財務省が「フィリピンの投資環境全体のほうが投資家にとって重要になる」と述べているのは、そういう意味である。

電力、水、人材、物流といった 税以外の条件で選ばれるかどうかに軸が移る、ということになる。

換算は1ペソ=2.6円(2026年8月21日時点)で計算した目安である。

SOURCES / 出典

  1. BusinessWorldメディア
    QDMTT seen generating P24.4B annually — DoFbworldonline.com
  2. The Philippine Starメディア
    ‘Global minimum tax to raise additional P24.4 billion revenues yearly’philstar.com

参考(本文の補足)

  1. Department of Finance (Philippines)Department of Finance

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#QDMTT#グローバルミニマム課税#財務省#法人税#優遇税制#多国籍企業#PEZA

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