PHILIPPINES STARTUP

対外純負債が656億ドルへ19.2%拡大、GDP比は13.4%に

KEY POINTS

ニュースの要点
中央銀行(BSP)の速報値によると、6月末のフィリピンの対外純負債は656億ドルで、GDP比13.4%にあたります。3月末の550億ドル(GDP比11.2%)から105億ドル、率にして19.2%広がりました。前年同期の639億ドルからは2.5%の増加です。
この動きの意味
対外金融負債が前期比3.1%増の3,249億ドルに増える一方、対外金融資産は0.2%減の2,593億ドルとほぼ横ばいでした。最大の押し上げ要因は純貸付負債で、713億ドルから783億ドルへ増えています。
今後の注目点
ペソが弱いまま負債が積み上がるか。銀行が純借り手の位置に移ったことの意味。外貨準備の減少が続くか。政府の対外調達がどこまで増えるか。

6月末のフィリピンの対外純負債が広がりました。

時点対外純負債GDP比
2026年6月末656億ドル13.4%
2026年3月末550億ドル11.2%
2025年6月末639億ドル—

四半期で105億ドル(19.2%)、1年で16億ドル(2.5%)の拡大です。四半期の動きが年間の動きを大きく上回っており、直近3か月に集中して増えたことが分かります。

対外純負債とは、国全体が外国に対して負っている債務から、外国に対して持っている資産を差し引いた額です。BSPの国際投資ポジション統計から算出されます。

負債が増え、資産は動かなかった

項目6月末前期比前年比
対外金融負債3,249億ドル+3.1%+1.5%
対外金融資産2,593億ドル-0.2%+1.3%

負債が3,150億ドルから増える一方、資産は2,599億ドルからわずかに減りました。差が広がったのは、ほぼ負債側の動きによるものです。

何が増えたのか

押し上げ要因を順に見ると、次のとおりです。

項目6月末3月末
純貸付負債783億ドル713億ドル
純直接投資債務368億ドル353億ドル
純債務証券負債133億ドル123億ドル

最大の要因は 純貸付負債で、70億ドル増えました。銀行とその他部門が海外からの借入を増やし、政府が多国間・二国間の債権者から資金を得たためです。純直接投資債務の増加は、企業グループ内の貸借によるものです。6月の政府によるグローバル債の発行は、純債務証券負債を押し上げました。

BSPは、政府の資金調達を財政需要、優先事業、インフラ案件に結びつけて説明しています。

資産側では、外貨準備と海外預金が減りました。純通貨・預金資産は113億ドルから97億ドルへ縮んでいます。一方で、居住者が海外子会社に持つ株式の評価額は上がり、一部を相殺しました。純直接投資持分負債は233億ドルから216億ドルへ、純ポートフォリオ持分負債は251億ドルから249億ドルへ、それぞれ縮んでいます。

銀行が「貸し手」から「借り手」に変わった

部門別に見ると、一つはっきりした変化があります。

部門6月末3月末
中央銀行純資産1,047億ドル純資産1,066億ドル
銀行純負債14億ドル純資産37億ドル
一般政府純負債922億ドル純負債893億ドル
その他部門純負債766億ドル純負債761億ドル

銀行が純資産37億ドルの位置から、純負債14億ドルへ移りました。BSPは、対外借入が増え、海外への貸付債権と預金が減ったためだと説明しています。

これは6月末のFCDU外貨建て融資が163億ドルへ5.6%増えたという統計と整合します。銀行が海外から借りて、国内の企業に外貨で貸しているという流れです。

外貨準備は四半期で1.8%減り、1,047億ドルになりました。

評価の仕方

注意が要るのは、この数字をどう重く見るかです。

BSPは、対外負債の大半が長期であり、近い将来に満期を迎える資金を借り換える必要は限られていると述べています。GDP比13.4%という水準も、他国と比べて極端に高いわけではありません。

ただしフィリピンの対外債務は過去最高の1,549億ドル、上期の経常赤字はGDP比6.4%という状況が重なります。ペソが弱い局面で外貨建ての債務が増えると、返済に必要なペソの額は増えます。

デイリー・ガーディアンは、納税者と家計にとっての論点は、その資金が何に使われるか、そして公共サービスや信用を乱さずに返済できるかだと指摘しています。

本記事の金額はすべてドル建ての統計であり、GDP比と前期比の読み取りが主眼のため円換算していない。

SOURCES / 出典

  1. Daily Guardianメディア
    Philippine net external liabilities widen to USD 65.6 billiondailyguardian.com.ph
  2. PhilSTARメディア
    Net external liabilities widen to $65.6 billion in Q2philstar.com

SHARE

#対外債務#中央銀行#国際投資ポジション#外貨#ペソ#統計

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS
トレンド

フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場

フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。

市場分析

フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】

PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。

フィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない

フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。