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ニッケル生産で世界2位のフィリピンが、鉱石の輸出から加工へ舵を切る

KEY POINTS

ニュースの要点
マルコス大統領が8月21日に署名した大統領令122号は、重要鉱物の精錬・素材加工・電池や電子部品の製造への投資を呼び込み、許認可を電子化し、放置された鉱区を取り上げる枠組みを定めた。鉱業産業調整評議会は財務相と環境天然資源相の共同議長体制に再編される。
この動きの意味
フィリピンはニッケル生産で世界2位だが、輸出される鉱石の約8割は加工されないまま中国へ向かい、付加価値は国外でつく。財務省が共同議長に入ったことは、この件を歳入と産業政策の問題として扱う姿勢を示している。
今後の注目点
優遇措置の中身がいつ具体化するか。放置鉱区の取り上げが実際に執行されるか。精錬・素材加工の新規投資が発表されるか。既存のHPAL2工場に増設の動きが出るか。

フィリピンの鉱山会社が、政府の方針転換を歓迎している。

DMCI Mining のTulsi Das Reyes社長は、パラワン島アボルランの現場で、重要鉱物の産業が良い時期に入りつつあるとの見方を示した。根拠に挙げたのが、マルコス大統領が 8月21日に署名した大統領令122号である。

「政府が鉱業を重要だと考えているということだ。我々がこの国に付加価値を加えられると考えている、ということでもある」と述べています。

大統領令が変えようとしているもの

大統領令122号は、鉱業と重要鉱物について国としての方針の枠組みを定めるものである。中身は大きく分けて2つある。

ひとつは、掘るまでの手続きを速くすること。

  • 環境天然資源省(DENR)と鉱山地質科学局(MGB)が産業の枠組みを作る
  • 政府が保有する鉱業資産の民営化を進める
  • 許認可の手続きを簡素化し、電子化する
  • 既存の鉱物生産分与契約を点検する
  • 手つかずのまま放置されている鉱区は取り上げる(「使わないなら失う」)

もうひとつが、掘ったあとを国内に残すことである。

貿易産業省の投資委員会(DTI-BOI)が、重要鉱物の精錬、素材加工、そして電池・電子部品・再生可能エネルギー機器の製造への投資を呼び込む役割を負う。あわせて、鉱業産業調整評議会を再編し、財務相と環境天然資源相が共同議長に就く。財務省が議長に入ったことは、この件を歳入と産業政策の問題として扱うという意思表示にあたる。

財務相のFrederick D. Go氏は「大統領令122号は、責任ある投資の条件を強めながら重要鉱物産業を育てるための、明確な枠組みを与えるものだ」と述べています。

「加工」と言うのには理由がある

フィリピンは ニッケルの生産量で世界2位、ニッケル鉱石・精鉱の輸出では世界最大である。にもかかわらず、この産業が国内に残す価値は小さい。

理由は単純で、掘った鉱石をそのまま船に積んで出しているからである。輸出される鉱石のおよそ8割は中国へ向かい、そこで加工されて金属になる。付加価値がつくのは、フィリピンの外側である。

生産量そのものも安定していない。2025年のニッケル生産量は27万トンで、前年の33万トンから24%減った。鉱石を売るだけの産業は、相手国の需要と価格にそのまま揺さぶられる。

フィリピンのニッケル鉱石輸出の行き先輸出される鉱石
80%
20%
  • 中国約8割
  • インドネシアなどその他残り

中国では主にニッケル銑鉄とステンレスの原料として使われる。

国内で加工している設備は、日本企業のものである

ここで、フィリピンの「加工」の現実を見ておく価値がある。

低品位のニッケル鉱からニッケルとコバルトを取り出すHPAL(高圧硫酸浸出)という技術がある。これを使った工場がフィリピンに2つあり、どちらも 住友金属鉱山 が手がけたものである。

工場場所出資
コーラルベイ・ニッケルパラワン州バタラサ住友金属鉱山100%
タガニートHPAL北スリガオ州住友金属鉱山75%/三井物産15%/Nickel Asia 10%

両工場が作るのは、ニッケルとコバルトを含む混合硫化物(MS)である。これが日本のニッケル工場と播磨事業所へ送られ、電気ニッケル、電気コバルト、硫酸ニッケルに仕上げられる。硫酸ニッケルは電池材料になる。

タガニートHPALは年3万トンで商業生産を始め、2017年度までに3万6,000トンへ引き上げた。ここで比べる数字の粒度が変わることを断っておくと、先ほどの27万トンは国全体の生産量、3万6,000トンは1工場の処理能力である。それでも桁の感覚はつかめる。大統領令122号が呼び込もうとしている「加工」を、日本の会社は20年前から現地でやってきた。

コーラルベイの操業開始は2005年、タガニートは2013年である。住友金属鉱山は2025年1月にコーラルベイの残り株式を取得し、完全子会社にしている。

見るべきところ

大統領令は方針であって、工場ではない。上半期の鉱物生産の実績を見ても、構造がすぐ変わる兆しがあるわけではない。

それでも、日本の企業にとって関係のない話ではない。精錬や素材加工への投資を政府が優遇の対象として名指ししたということは、すでに現地に設備を持つ側にも、これから電池材料の供給網を組み立てたい側にも、条件が変わりうるということである。次に見るべきは、優遇措置の中身がいつ、どの形で具体化するかである。

SOURCES / 出典

  1. Philippine Daily Inquirerメディア
    PH critical minerals industry seen entering sweet spotbusiness.inquirer.net
  2. フィリピン財務省(Department of Finance)政府・規制当局一次情報
    DOF Backs National Mining Framework to Drive Economic Growth, Industrializationdof.gov.ph
  3. 住友金属鉱山企業公式一次情報
    ニッケルを回収するHPAL技術smm.co.jp

参考(本文の補足)

  1. StatistaNickel production by leading country 2025
  2. Mining TechnologyNickel production in the Philippines and major projects
  3. 住友金属鉱山コーラルベイニッケル社株式の一部取得について
  4. DMCI Mining CorporationDMCI Mining Corporation

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#重要鉱物#ニッケル#大統領令122号#DMCI Mining#住友金属鉱山#HPAL#電池材料#DENR

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