輸出企業のVAT還付、認定書を待たずに請求できるようになった
KEY POINTS
- ニュースの要点
- 内国歳入庁が歳入覚書回状96-2026号を出し、輸出志向企業が貿易産業省のゼロ税率認定を待つあいだに国内購入と輸入で負担した付加価値税も、還付の対象になると明確化しました。9月7日付で、従来の回状37-2025号を改正するものです。
- この動きの意味
- 従来は認定書が出るまで請求できず、その間に払った税は資金が寝ている状態でした。認定の発行までに時間がかかるほど、企業は運転資金を取られます。今回の整理で、待っている期間の税も後から回収できることになります。
- 今後の注目点
- 実際の還付にどれだけ時間がかかるか。2025年12月31日という認定書の期限を過ぎた企業がどう扱われるか。輸出比率70%の判定でつまずく事例が出るか。還付の実務が回状どおり運用されるか。
フィリピンの内国歳入庁(BIR)が、輸出企業の付加価値税(VAT)の還付について取り扱いを明確にしました。歳入覚書回状96-2026号、9月7日付です。
変わったのはここです。
| 従来 | 今回の整理 | |
|---|---|---|
| 還付を請求できる時期 | 貿易産業省のゼロ税率認定が出たあと | 認定を待っているあいだに払った税も対象 |
認定待ちの期間、資金が寝ていた
輸出企業は、国内での仕入れや輸入にかかったVATについて、ゼロ税率の適用を受けて還付を請求できます。ただしその前提として、貿易産業省の輸出マーケティング局(DTI-EMB)が発行する ゼロ税率認定書が要りました。
問題は順番です。認定書が出るまでは請求できないため、その間に払ったVATは企業の中で寝たままになります。認定に時間がかかるほど、運転資金がそこに縛られます。
今回の整理で、待っている期間に負担した分も後から回収できることになりました。BIRのCharlito Martin Mendoza長官は「要件を満たし、認定書が所定の期間内に発行されていれば、待っているあいだに適切に負担したVATは法にもとづいて還付されうる」としています。
条件は3つ
対象になるのは、次の3つをすべて満たす場合です。
- 2024年11月28日以降に負担したVATであること
- ゼロ税率認定書が 2025年12月31日までに発行されていること
- 前年の輸出比率が70%以上であること
還付そのものの要件は変わりません。内国歳入法第112条にもとづき、書類による裏づけと、その仕入税額がゼロ税率の売上に直接ひも付くことの証明が要ります。
「事業を営むコスト」の一部が動いた
この改正は小さく見えますが、効き方は資金繰りに直接出ます。
ジェトロの調査で、フィリピンに進出した日系企業が経営上の問題の最上位に挙げたのは 税務手続きの煩雑さで62.5%でした。海外直接投資が33.4%減った理由として指摘されたのも、法律ではなく事業を営むコストのほうです。
税務の領域では、8月に調査対象をシステムで選び同一年度の調査を原則1回にまとめる命令が出たばかりです。今回のVAT還付の整理も、同じ方向の動きにあたります。手続きが企業から奪っていた時間とお金を、少しずつ戻す流れです。
ただし、回状が出たことと、実際に還付金が振り込まれることは別です。確かめるべきは運用のほうになります。
SOURCES / 出典
- PhilSTARメディアBIR allows VAT refunds for exportersphilstar.com
- Philippine Daily InquirerメディアBIR clears VAT refunds for exporters before certificationbusiness.inquirer.net
参考(本文の補足)
- Bureau of Internal RevenueBureau of Internal Revenue
同じカテゴリーのNews
RELATEDこの動きを読み解くInsights
INSIGHTSフィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない
フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。
フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場
フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。
フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】
PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。



