PHILIPPINES STARTUP

ペソ安が政府系ファンドの評価を押し上げる、ただし規模は小さい

KEY POINTS

ニュースの要点
フィリピンの政府系ファンドMaharlika Investment Corporation(MIC)のRafael Consing Jr.社長が、ペソ安によって保有するドル資産のペソ建て評価が上がると説明しました。ただし外貨建ての保有は小さく、損益への影響は限定的だとしています。
この動きの意味
より効くのは別の経路です。ドルで収入を得ている投資先の売上がペソ建てで膨らみ、配当や持分法の利益としてファンドに入ってきます。港湾運営のAsian Terminalsがその例です。
今後の注目点
ペソ安が続いたときに実際の利益がどこまで押し上げられるか。政府からの500億ペソの資本が入るか。投資先の選び方が為替の影響を織り込む方向に動くか。

フィリピンの政府系ファンド Maharlika Investment Corporation(MIC)が、ペソ安の影響について説明しました。

Rafael Consing Jr. 社長の言葉はこうです。「我々の貸借対照表はペソで報告される。ペソ安はドル建ての保有のペソ換算額を押し上げる。だからポートフォリオのその部分については、通貨の下落は希薄化ではなく加算になる」

ただし、そこは小さい

ただし話はそこで終わりません。MICは外貨建ての保有が小さく、為替による純利益への寄与は重要な水準にはならないとしています。

より効くのは、別の経路です。投資先の企業がドルで稼いでいる場合、その売上がペソ建てで膨らみます。その結果が配当や持分法の利益としてMICに入ってきます。

例として挙がったのが、港湾運営の Asian Terminals Inc.(ATI)です。収入の一部を外貨で得ているため、同じ構図が働きます。MICは3月に公開買い付けでATI株の取得を完了し、総額は 47億9,000万ペソ(約119億円)でした。ATIは持分法の適用会社となり、MICは利益の取り分を計上できます。

為替そのものより、投資先が何の通貨で稼いでいるかが効くという整理になります。

ファンドの規模

参考までに、MICの足元の姿は次のとおりです(2026年6月末時点)。

上半期の投資実行188億ペソ(約468億円)
累計の投資実行247億ペソ(約615億円)
総資産1,295億ペソ(約3,225億円)
現金・現金同等物530億ペソ(約1,320億円)
上半期の運用収益20億9,000万ペソ(約52億円)
包括利益26億9,000万ペソ(純利益12億4,000万ペソ、その他の包括利益14億5,000万ペソ)

上半期の投資の柱は、Petronへの150億ペソ(約374億円)の運転資金の融資と、ATIの持分拡大でした。

資本金の払い込みは、まだ終わっていません。当初の資本1,250億ペソのうち、ランドバンクの500億ペソと開発銀行の250億ペソは払い込み済みですが、政府からの500億ペソは6月末時点で未了です。

Consing社長は、長期の考え方をこう述べています。「世代をまたぐ長い資産・負債の構造を踏まえると、通貨の価値低下から購買力を守る戦略は、通貨が下がる速度より速く成長できる生産的な事業に投資することだ」

日系企業にとっての読みどころ

このファンドの説明は、ペソ安のなかで事業の通貨構成をどう読むかの見本になります。

日本企業がフィリピンで事業を持つとき、同じ問いが立ちます。売上はどの通貨で立つのか。コストはどの通貨で出るのか。 輸出型で売上がドル、コストがペソなら、ペソ安は追い風です。国内販売でコストに輸入部材や燃料が多ければ、逆風になります。

ペソは1ドル62.86ペソで過去最安値を更新したばかりです。この水準が続く前提で、通貨の構成を点検しておく価値があります。

換算の基準は1ペソ2.49円(2026年9月4日時点)です。

SOURCES / 出典

  1. PhilSTARメディア
    Peso slide may raise value of Maharlika investmentsphilstar.com
  2. PhilSTARメディア
    Maharlika investments hit P18.8 billion in 6 monthsphilstar.com

SHARE

#Maharlika#政府系ファンド#ペソ安#Asian Terminals#為替#投資

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS
市場分析

フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】

PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。

トレンド

フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場

フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。

フィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない

フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。