太陽光パネルの下で野菜を育てるCiticoreの取り組みが5州へ広がる
KEY POINTS
- ニュースの要点
- Citicore Renewable Energyが、太陽光発電所の土地で同時に作物を育てるアグリボルタイクスを広げる。稼働中はバタンガス州トゥイとパンパンガ州アラヤットで、パンガシナン州ビナロナン、タルラック州、西ネグロス州シライへ拡大する。タルラックの事業では農業省と組む。
- この動きの意味
- 太陽光発電所に要る土地の条件は農地とほぼ同じで、両者は同じ平地を取り合う。コメの価格が二桁で上がり続ける国では農地の転用に抵抗が大きく、この方式は『どちらを取るか』を『両方取る』に変える試みにあたる。
- 今後の注目点
- 4年で約16トンという収穫量が桁を変えるか。農業省との連携が制度上の位置づけにつながるか。資金と機材の制約が解けるか。他の発電事業者が同じ方式を採り入れるか。
太陽光発電所の土地で、同時に作物を育てる。アグリボルタイクス(営農型太陽光、現地では「アグロソーラー」と呼ぶ)と呼ばれるやり方を、フィリピンの再生可能エネルギー大手 Citicore Renewable Energy(CREC)が広げようとしている。
すでに動いているのはバタンガス州トゥイと、パンパンガ州アラヤットの2か所。今後、パンガシナン州ビナロナン、タルラック州、西ネグロス州シライへ広げる計画である。タルラックの事業では 農業省と組む。
運営はCiticore Agri-Aqua Ventures(CAAVI)が担う。同社のCiticore財団が設立した会社である。財団のCzarina Brodit-Valeros代表は「土地が持つ2つの用途を、両方使うことにした」と述べています。
なぜ「両方使う」ことに意味があるのか
太陽光発電所を建てるには、日当たりのよい平らな土地がまとまって要る。それは農地の条件とほぼ同じである。
フィリピンではこの重なりが政治的な争点になりやすい。コメの価格が前年比19.4%上がり続けている国で、農地を発電所に転換することへの抵抗は小さくない。一方で電力は足りず、大規模太陽光の建設は各社が急いでいる。ACENはザンバレスに300メガワットを建て、MGENは3,500メガワット規模の事業を進めている。
アグリボルタイクスは、この「どちらを取るか」を「両方取る」に変えようとする試みである。パネルの下や間に作物を植え、地権者や地域には農業の収入も残す。
ただし、収穫量はまだ小さい
期待と実績は分けて見る必要がある。
CRECが2022年から2025年までにこの方式で収穫した高付加価値作物は、約1万6,000キログラムである。ナス、青唐辛子、レタス、パセリなど。4年間の合計で16トンということになる。
同社の太陽光の規模と並べると、差がはっきりする。
| 稼働中の太陽光発電所 | 16か所 |
| 合計出力 | 791メガワット |
| 開発中の案件 | 5ギガワット超 |
| 4年間の収穫量 | 約16トン |
発電はギガワット単位で語られ、収穫はトン単位にとどまっている。食料供給に効く量ではない。同社も資金と機材が制約になっていることを認めている。
とはいえ「できることを示した」段階には入っている。取り組みは2021年、タルラックの発電所でウコンを試したことから始まった。他媒体は同社のバタンガスの設備(約200メガワット、蓄電池を併設)を 試験段階を超えたフィリピンで最も成熟した事例と評している。
見るべきところ
エネルギー省のSharon Garin長官がタルラックの現場を視察している。政府側の関心は、電力と食料をめぐる土地の取り合いをどう収めるかにある。
次に確かめるべきは、収穫量が桁を変えるかどうかである。16トンが160トン、1,600トンへ動くなら、農地転用をめぐる議論の前提が変わる。動かないなら、発電所の付帯事業という位置づけにとどまる。
日本でも営農型太陽光は制度として存在し、同じ「農地と発電の両立」という課題を扱っている。フィリピンの事例が示しているのは、技術ではなく規模の壁のほうである。
SOURCES / 出典
- Philippine Daily InquirerメディアNew 'power play' for food securitybusiness.inquirer.net
- The Manila TimesメディアCiticore anchors solar expansion on agrivoltaics modelmanilatimes.net
参考(本文の補足)
- Citicore Renewable Energy Corp.Citicore Renewable Energy Corporation
同じカテゴリーのNews
RELATEDこの動きを読み解くInsights
INSIGHTSフィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】
PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。
フィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない
フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。
英語と安さで選ばれたフィリピンの画面に、世界の口座と診療記録が映っている
フィリピンのコールセンターが選ばれてきた理由は、英語が通じて安いことです。業界団体自身の資料がそう書いています。ところがそこに届いているのは、世界の銀行と医療のユーザーからの問い合わせでした。選ばれた理由と任されている中身が噛み合っていません。2年で2度、オーストラリア企業の顧客情報がマニラを経路に抜かれ、アナリストは「顧客はリスクを拠点の所在地で値付けする」と言います。



