AIを49ペソから7日間、Smartが小分けで売る
KEY POINTS
- ニュースの要点
- 携帯大手 Smart Communications が、生成AIの利用をプリペイドで売る「AI.Smart」を2026年9月22日に始めました。7日49ペソ(約122円)から、30日499ペソ(約1,242円)までの4段階です。
- この動きの意味
- ChatGPT、Claude、Gemini、Amazon Nova などを1つの画面から使えます。基盤はAmazon Bedrock。クレジットカードは不要で、携帯料金に合算されます。
- 今後の注目点
- Smartの担当者は、既存のAI定額が月300ペソ以上かかることを挙げ「その値づけに挑む」としています。フィリピン語にも対応します。
携帯大手 Smart Communications が、生成AIの利用をプリペイドで売り始めました。商品名は AI.Smart。2026年9月22日の開始です。
値づけ
| 期間 | 価格 | 円換算 |
|---|---|---|
| 7日 | 49ペソ | 約122円 |
| 14日 | 99ペソ | 約247円 |
| 30日(Pro) | 149ペソ | 約371円 |
| 30日(Max) | 499ペソ | 約1,242円 |
7日49ペソという刻み方が、この商品の性格を表しています。フィリピンで「サシェ(小袋)売り」と呼ばれる売り方です。シャンプーも調味料も1回分ずつ売られる市場に、AIを同じ形で持ち込んでいます。
何が使えるのか
1つの画面から、複数のAIを使い分けられます。
- Amazon Nova
- Anthropic の Claude
- Google Gemini
- OpenAI
- Thinking Machines
基盤はアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の Amazon Bedrock です。利用は AI.Smart のサイトと LiveSmart アプリから。開発に関わったのは Avtica(Amihan Global Strategies)です。
重要な設計が2つあります。
- クレジットカードが要らない。既存の携帯料金の口座に合算されます
- フィリピン語に対応
誰に売るのか
Smartの第一上級副社長 Lloyd Manaloto 氏は、狙いをこう説明しています。既存のAI定額は「加入に月300ペソ以上かかる」。その値づけに挑む、と。
対象として挙がったのは、学生、フリーランス、小規模事業者、家族です。1日に1〜2回プロンプトを打つ程度の使い方でも割に合う設計になっています。
月額でしか買えないものを、日割りで買えるようにしたという構図です。
日系企業にとっての読みどころ
読みどころは、課金の経路です。
クレジットカードを持たない層にAIを届けるとき、壁になるのは技術ではなく決済です。Smartは携帯料金への合算でそれを外しました。フィリピンの携帯はプリペイドが主流で、加入者は現金でロードを買います。現金からAIまで、カードを介さない経路ができたことになります。
これは、フィリピンで消費者向けのデジタル商品を売る企業にとって、直接の参考になります。月額課金と決済手段を前提に設計した商品は、この市場では届く相手が限られます。
もう一点、複数のAIを束ねて売るという形も見どころです。利用者はどのモデルを使うかを選べますが、契約も課金も1つです。モデルを自前で選ばせるのではなく、束ねて小分けにして売る。通信会社の得意な形に落とし込んでいます。
Smartは5Gの据置端末を40%値下げするなど、価格を動かして加入者を取りにいく施策を続けています。
1ペソ=2.49円で換算しています(2026年9月4日時点)。
SOURCES / 出典
- The Philippine StarメディアSmart creates sachet AI packagephilstar.com
- GMA News OnlineメディアSmart taps Avtica to make AI tools more accessible, affordablegmanetwork.com
同じカテゴリーのNews
RELATEDこの動きを読み解くInsights
INSIGHTS英語と安さで選ばれたフィリピンの画面に、世界の口座と診療記録が映っている
フィリピンのコールセンターが選ばれてきた理由は、英語が通じて安いことです。業界団体自身の資料がそう書いています。ところがそこに届いているのは、世界の銀行と医療のユーザーからの問い合わせでした。選ばれた理由と任されている中身が噛み合っていません。2年で2度、オーストラリア企業の顧客情報がマニラを経路に抜かれ、アナリストは「顧客はリスクを拠点の所在地で値付けする」と言います。
マニラで見つけた課題を4か国に広げたKitaが、シードで約7億円を集めた理由
新興国の貸し手向けに与信審査を自動化するKitaが、シードで450万ドル(約7億円)を調達しました。創業者はマニラ出身で、フィリピンの貸し手と働くなかで課題を見つけています。ただし会社はサンフランシスコにあり、稼働しているのはフィリピン・インドネシア・メキシコ・米国の4市場。公開されている顧客6社のうち、フィリピンの貸し手は1社です。この設計の違いが、値段の付き方を変えています。
2025年のフィリピン最大の資金調達は5億円。それを超えるお金が国外から来る理由
Forbes Asiaの「100 to Watch」に、フィリピンから2社が入りました。並べてみると、フィリピンで大きな資金を集めた会社には共通点があります。お金を出しているのが、ほぼ全部フィリピンの外の投資家です。理由は起業家の考え方ではなく、国内のベンチャーファンドの大きさにありました。



