AI制作の12話アニメ「Trading Wars」、Mishkamが2027年初に公開へ
KEY POINTS
- ニュースの要点
- ケソン市のWeb3企業Mishkam Technologiesが、生成AIで作るアニメ「Trading Wars」全12話を2027年第1四半期に公開する計画を示した。自社で開発した大規模言語モデル(LLM)と市販の生成AIを併用し、1フレームずつ人が確認する工程を挟むという。
- この動きの意味
- アニメ単体の話ではない。同社はWeb3の受託開発会社で、この作品を軸にトークン、NFTカード、カードゲーム、eスポーツまで広げる構想を持つ。**作品の持ち分25%を独自トークンとして売り出す**という点が、日本の制作委員会方式とも通常のIPライセンスとも異なる。
- 今後の注目点
- CrunchyrollとNetflixとの交渉がまとまるか。トークンの売り出しがフィリピンの証券規制にどう扱われるか。12話を制作しきれるか。同社はまだ投資家がついていないと述べている。
ケソン市のWeb3企業 Mishkam Technologies が、生成AIで制作するアニメシリーズ「Trading Wars」を進めている。全12話で、Inquirer Technology の取材によれば第1シーズンの公開は 2027年第1四半期 を予定する。
同社はアニメ制作会社ではない。公式サイトでは自らを Web3のエージェンシー と位置づけ、ブロックチェーン開発、ゲーム開発、3Dアニメーション、eスポーツ運営、さらに集合住宅向けの光ファイバー網敷設まで手がけると掲げている。Trading Warsは、その中の3つの主要案件の1つにあたる。
「シンソグラフィ」と呼ぶ制作手法
同社は制作手法を シンソグラフィ(synthography) と呼ぶ。人間が物語と映像の方向を決め、生成AIが絵を作り、最後に人が仕上げる、という組み合わせを指す造語である。一般的なAI画像生成と区別するために使っているという。
技術の土台として、自社で大規模言語モデル(LLM)を開発 し、市販の生成AIツールと組み合わせている。
工程は絵コンテから始まる。第2話では、10のシーンに対して 97フレーム を用意した。そのうえでフレームを1枚ずつ確認する。最高執行責任者の Matthew Apilado 氏は、確認する箇所をこう説明している。
ボタン、指、鼻、口の動き、目の動き、耳。1シーンに15フレームあれば、その15枚すべてを見る。
雑なAI生成物(AI slop)と呼ばれないための工程だという。同氏はまた、いまアニメーターを雇っていない理由を「スタートアップでまだ資金がないこと」と「自分たちのやり方を先に世の中に理解してもらいたいこと」の2つだと述べ、将来は雇う計画があるとしている。
物語は暗号資産の詐欺から始まる
主人公のレンは、貯金の全額を暗号資産につぎ込み、ラグプル(開発者が資金を持ち逃げする詐欺)に遭って失う。師匠のギンゾウから取引の基礎と、詐欺を見抜くための兆候の読み方を学び、世界規模の取引コンペに挑む。優勝者は世界の金融の意思決定を左右できる、という設定である。
Apilado氏はこの物語を「暗い、そして政治的」と表現している。暗号資産の基礎と、映像制作におけるAIの使い方の両方を視聴者に伝えることが狙いだという。
作品の持ち分25%をトークンにする構想
radar.ph の記事 によれば、同社はTrading Warsを軸に次の展開を計画している。
| 構想 | 内容 |
|---|---|
| トークン | プロジェクトの持ち分の 25% を独自の暗号資産(ティッカー $TWL)としてトークン化する |
| NFTカード | 登場人物をもとにした4段階のレアリティのNFTカード |
| カードゲーム | デジタルと現物の両方のトレーディングカードゲーム |
| eスポーツ | この作品を中心にした地域大会の開催 |
最高経営責任者の Chris Apilado 氏(Matthew氏の兄弟)は、暗号資産の事業にはまだ投資家がついていない と述べている。アニメ本体がまだ公開されていないためで、ブランドが立ち上がったあとは市場とトークン価格を注視し、必要な法令を守って運営するとしている。
Matthew氏は、事業をブロックチェーンだけに寄せない方針も示している。アニメ、現物のカードゲーム、グッズなど、Web3抜きでも成立する柱を用意しているという。
配信先はまだ決まっていない
配信については Crunchyroll と Netflix と話し合っている段階で、合意には至っていない。
同社は、シンソグラフィによる長編作品としては世界初だと主張している。この分野は現在、米国・中国・欧州の企業が中心で、フィリピンが早い段階で加わる例になる、というのが同社の位置づけである。
SOURCES / 出典
- Inquirer TechnologyメディアTrading Wars, the new AI-assisted Filipino anime seriestechnology.inquirer.net
- radar.phメディア'Trading Wars,' the world's first syntography animated series, is being built in the PHradar.ph
- Mishkam Technologies企業公式一次情報MISHKAM | Web3 Agency - Software, Multimedia & Esports(公式サイト)mishkam.tech
同じカテゴリーのNews
RELATEDこの動きを読み解くInsights
INSIGHTS英語と安さで選ばれたフィリピンの画面に、世界の口座と診療記録が映っている
フィリピンのコールセンターが選ばれてきた理由は、英語が通じて安いことです。業界団体自身の資料がそう書いています。ところがそこに届いているのは、世界の銀行と医療のユーザーからの問い合わせでした。選ばれた理由と任されている中身が噛み合っていません。2年で2度、オーストラリア企業の顧客情報がマニラを経路に抜かれ、アナリストは「顧客はリスクを拠点の所在地で値付けする」と言います。
2025年のフィリピン最大の資金調達は5億円。それを超えるお金が国外から来る理由
Forbes Asiaの「100 to Watch」に、フィリピンから2社が入りました。並べてみると、フィリピンで大きな資金を集めた会社には共通点があります。お金を出しているのが、ほぼ全部フィリピンの外の投資家です。理由は起業家の考え方ではなく、国内のベンチャーファンドの大きさにありました。
マニラで見つけた課題を4か国に広げたKitaが、シードで約7億円を集めた理由
新興国の貸し手向けに与信審査を自動化するKitaが、シードで450万ドル(約7億円)を調達しました。創業者はマニラ出身で、フィリピンの貸し手と働くなかで課題を見つけています。ただし会社はサンフランシスコにあり、稼働しているのはフィリピン・インドネシア・メキシコ・米国の4市場。公開されている顧客6社のうち、フィリピンの貸し手は1社です。この設計の違いが、値段の付き方を変えています。



