原子力規制庁の初代トップに、7団体がArcilla氏を推薦
KEY POINTS
- ニュースの要点
- フィリピンの科学・医学・工学の7団体が、新設の原子力規制庁(PhilATOM)の初代長官に、元フィリピン原子力研究所(PNRI)所長のCarlo Arcilla氏を任命するよう大統領に要請しました。
- この動きの意味
- PhilATOMは2025年9月26日に成立した共和国法12305号(原子力安全法)で作られた準司法機関です。原子力関連の許認可、放射線防護、放射性物質の管理、緊急時対応の調整を所管します。
- 今後の注目点
- 規制機関のトップが決まらないと、原発計画の審査も始まりません。推薦は7団体によるもので、任命そのものはまだです。
フィリピンの専門7団体が、新設の原子力規制庁(PhilATOM)の初代長官の人事について、大統領に要請を出しました。
誰を推しているか
推されているのは、Carlo A. Arcilla 氏です。科学技術省・フィリピン原子力研究所(DOST-PNRI)の前所長で、最近退任しました。
挙げられた資質は次のとおりです。
- 原子力科学と規制の枠組みの両方の経験
- 2017年から2026年までのPNRI所長としての実績
- フィリピン原子力法の起草への関与
- 地盤工学、火山学、放射性廃棄物の処分の専門性
PNRIはArcilla氏の在任中、科学技術省の19機関のなかで査読付き論文の数が最も多い研究機関になりました。外部の研究資金は、運営予算のほぼ半分を占めるまでになっています。
フィリピン化学工学会の会長は、次のように述べています。
国内で原子力と規制の両方の経験を同時に持つ人は、実質的にほかにいない
推した団体
- フィリピン冶金工学会
- フィリピン探査地球物理学会・鉱山技術者協会
- フィリピン化学工学会
- フィリピン核医学会
- フィリピン放射線科学会
- フィリピン非破壊検査学会
- フィリピン大学ディリマン校 国立地質科学研究所
推薦はいずれも専門団体からで、政党や業界団体ではありません。
PhilATOM とは何か
- 2025年9月26日共和国法12305号が成立
原子力安全法、マルコス大統領が署名
- 2026年9月7団体が初代長官の人事を要請
任命はまだ
共和国法12305号(原子力安全法)で作られた準司法機関です。所管は次のとおりです。
- 電離放射線の有害な影響から人と環境を守ること
- 原子力関連活動の許認可
- 国際原子力機関(IAEA)への約束の履行を確かめること
- 放射性物質の輸送・保管・処分の規制
- 国家防災管理評議会と連携した原子力緊急時の備え
法律は、許可のない原子力施設の立地・建設・運転・使用前検査・廃止、放射性物質の取り扱い、放射線発生装置の試験、放射性廃棄物の管理を禁じています。違反には最大1億ペソの罰金と禁錮が科されます。
日系企業にとっての読みどころ
規制機関の長が決まらないと、審査は始まりません。
フィリピンは原子力の導入を検討しており、立地の候補地も挙がっている段階です。ただし、規制する側の体制が整っていなければ、事業者は申請すらできません。
原子力の機器・建設・保守に関わる日本企業にとって、この人事は事業機会の時計が動き出すかどうかを示す指標になります。逆に言えば、任命が遅れるほど、計画全体が後ろにずれます。
もう一点、規制の中身も見どころです。罰金の上限1億ペソ、準司法機関としての位置づけ、IAEAとの整合。枠組みは先に作られていて、動かす人が足りていないという構図です。
フィリピンの電力はビサヤで停電警報が続き、石炭の入札は中止になりました。原子力が議題に載り続ける背景には、こうした供給側の不足があります。
SOURCES / 出典
- Daily TribuneメディアGroups endorse Arcilla as first PhilATOM chieftribune.net.ph
- GMA News OnlineメディアMarcos signs law creating new nuclear energy authoritygmanetwork.com
同じカテゴリーのNews
RELATEDこの動きを読み解くInsights
INSIGHTS600社が使ったSalariumは2023年にサービスを無期限停止、倒産も解散もしていない
フィリピンで勤怠から給与の振り込みまでを1つで担っていたSalariumは、2019年時点で約600社が使い、2021年までに2万社へ広げると語っていた会社でした。2023年8月に利用企業が資金を引き出せなくなり、12月31日にサービスを無期限で停止します。ただし倒産も解散もしていません。法人はいまも登記に残ったままです。何が起きたのかをたどります。
フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場
フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。
フィリピンの物価は日本の3分の1?牛乳もクルマも日本より高い【2026年9月】
PHILIPPINES STARTUP編集部の私は、マニラに住んでいたことがあります。週2回外食して、プール付きのマンションに住んだら、生活費は東京とほとんど変わりませんでした。むしろ高い月もありました。100品目を東京と比べたら、「日本の3分の1」に当てはまったのは19品目だけ。牛乳もガソリンもクルマも日本より高い。日本人が住むBGCとマカティの家賃、必要な月額、そして物価上昇がいま企業に何を起こしているかまで書きました。



