造船の職業訓練センターをザンバレスに、韓国のODAで検討が動き出す
KEY POINTS
- ニュースの要点
- フィリピン労働雇用省が、造船の職業訓練センターをザンバレス州に設ける構想を進めている。韓国の政府開発援助事業として、HD現代重工業と韓国舶用機資材研究院が事業化調査を担い、韓国産業技術振興院と産業通商資源部が管理する。調査は2026年後半に予定されている。
- この動きの意味
- 同州のアギラ・スービック造船所では、HD現代が旧韓進の設備を引き継いで3,500人を雇い、本格稼働時に約7,000人、年間最大10隻を目指している。韓国の援助資金で、韓国企業が使う技能者を育てる枠組みになる。
- 今後の注目点
- 2026年後半の事業化調査の結論。訓練センターの設置場所がどこに決まるか。訓練する人数と職種が公表されるか。3月にTESDAと結んだ覚書の内容がどう具体化するか。
フィリピン労働雇用省(DOLE)が、造船の職業訓練センターをザンバレス州に設ける構想を進めている。Francis Tolentino労働相が、韓国の HD現代重工業 と韓国舶用機資材研究院(Komeri)の関係者と会い、事業化調査の進め方と、フィリピン側が協力すべき点を話し合った。
この構想の性格を決めているのは、資金の出どころである。これは 韓国の政府開発援助(ODA)事業として検討されている。事業化調査は、韓国産業技術振興院(KIAT)と韓国の産業通商資源部が管理し、HD現代重工業とKomeriが実施する。時期は 2026年後半である。
労働省がフィリピン側の窓口になり、技術教育技能開発庁(TESDA)が人材育成の主要な相手方として入る。両機関は手続きを急ぎ、訓練センターを置く場所を選ぶ作業に入る。掲げているのは「環境に配慮した造船」の分野である。
Tolentino労働相は「合意の細部と段取りを詰めるため、我々は倍の速さで働くことになる」と述べています。
なぜザンバレスなのか
場所の選定に、この話の中身が出ている。
ザンバレス州のスービック湾には、HD現代重工業が2026年1月から動かしている アギラ・スービック造船所がある。かつて韓国の韓進(ハンジン)が運営していた造船所を引き継いだものである。
- 2006年韓進が操業開始
最盛期は約1万3,000人が働いた
- 2019年経営破綻
破綻前に約7,000人を削減
- 2022年3月CerberusとAgila Navalが引き継ぎ
韓進の債務を整理し50年の賃借権を継承
- 2024年🇰🇷 HD現代との提携が発表
マルコス大統領が公表
- 2026年1月HD現代が操業開始
約200ヘクタールを10年賃借、10年で約5億5,000万ドルを投資
- 2026年3月11日TESDAとHD現代が覚書
造船の訓練課程の開発と就職の道づくり
- 2026年7月28日第1船が進水
全長250メートルの「Orion Jade」
- 2026年9月訓練センターの構想
韓国のODA事業として事業化調査へ
造船所の南側区画をCerberus Capital ManagementとAgila Navalが取得し、HD現代重工業が運営者として入っている。
HD現代重工業はこれまでに 3,500人を雇い、本格稼働時には 約7,000人を見込む。今後3〜5年で年間最大10隻を建造する計画で、船1隻あたりの建造には16〜18か月かかる。
人を7,000人に増やし、年10隻を建てるには、溶接や配管や電装の技能者が継続的に必要になる。訓練センターは、その供給源を作る話である。
今回が最初の一歩ではない
TESDAとHD現代重工業は、すでに 2026年3月11日に覚書を結んでいる。フィリピン・韓国ビジネスフォーラムの場で署名されたもので、造船の技術訓練の課程を作り直し、修了者の就職につなげる内容だった。
TESDAのKiko Benitez長官は当時、「HD現代との連携は、技能訓練を産業の必要に合わせることの重要さを示している」と述べています。
つまり今回の訓練センター構想は、3月の覚書の延長線上にある。変わったのは、韓国政府の援助資金という裏づけが加わったことである。
日本の造船所は、すでに1万人規模で同じことをしている
フィリピンの造船を語るとき、日本の企業は外側にいない。
セブ島バランバンにある 常石鉄工(Tsuneishi Heavy Industries (Cebu)) は、日本の常石造船とセブのアボイティス財閥が1994年に立ち上げた合弁で、国内最大級の造船拠点のひとつになっている。関連の雇用は1万2,000人を超える。2026年5月にはマルコス大統領との会談で拡張計画が示され、6月には隣接地64.7ヘクタールを経済特区に編入する大統領布告も出た。
常石鉄工は関連雇用を含む数字。HD現代の見込みは本格稼働時の目標値で、現時点の実績ではない。
日本と韓国の造船会社が、同じ国の同じ技能を持つ労働力を使って船を建てている。そこへ韓国側が、政府の援助資金で訓練の仕組みそのものを作りにいく。技能者の取り合いが起きている場所で、片方が供給側の設備を押さえにかかった構図になる。
まだ調査の段階である
念のため確認しておくと、決まったのは事業化調査を進めることである。設置場所はこれから選ぶ段階で、規模も、訓練する人数も、開設の時期も公表されていない。
それでも見ておく意味はある。フィリピンの人材が海外に出て働くのではなく、国内の産業に技能者として供給される仕組みを、外国政府と企業が一緒に作ろうとしている。日本企業がフィリピンで製造業の人材を確保しようとするとき、この訓練の枠組みに誰が入っているかは効いてくる。
換算は1ドル=155.9円(2026年9月4日時点)で計算した目安である。
SOURCES / 出典
- Philippine Daily InquirerメディアDole, Korean partners eye training facility on shipbuildingbusiness.inquirer.net
- The Manila TimesメディアPH, SKorea explore training center for shipbuildingmanilatimes.net
参考(本文の補足)
- TESDATESDA partners with HD Hyundai to strengthen shipbuilding skills development
- The Maritime ExecutiveHD Hyundai Set to Start Shipbuilding in 2026 in the Philippines
- The Manila TimesHD Hyundai launches first vessel at Subic, marks new era of PH shipbuilding
- GMA News OnlineTsuneishi touts Cebu shipbuilding facility expansion during Marcos Japan visit
- 常石造船TSUNEISHI HEAVY INDUSTRIES (CEBU), Inc.
- HD Hyundai Heavy Industries Co., Ltd.HD Hyundai Heavy Industries
- KomeriKorea Marine Equipment Research Institute
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