PHILIPPINES STARTUP
NEWS投資

豪州系が太陽電池セル工場をバタンガスに、33億ペソで米欧向け輸出

KEY POINTS

ニュースの要点
オーストラリア資本のPhilippine Aurion Solar Technologiesが、バタンガス州サントトマスのFirst Philippine Industrial Parkに33億4,000万ペソを投じて1.3ヘクタールの太陽電池セル工場を構えました。生産したセルは米国と欧州へ輸出します。
この動きの意味
フィリピンの太陽光は、これまで発電所を建てる話が中心でした。今回は部材そのものを作って域外へ売る側の投資です。国内の電力事情とは別の理由で、製造拠点として選ばれています。
今後の注目点
生産能力と出荷先の内訳が公表されるか。米国と欧州の通商措置がこの立地の前提をどう動かすか。同じ工業団地に関連する部材メーカーが続くか。

オーストラリア資本の Philippine Aurion Solar Technologies が、バタンガス州サントトマスの工業団地 First Philippine Industrial Park(FPIP)に 33億4,000万ペソ(約83億円)を投じて太陽電池セルの工場を構えました。敷地は1.3ヘクタールです。

生産したセルは 米国と欧州向けで、そこから他の地域へも広げる計画とされています。

建てる話ではなく、作って売る話

フィリピンの太陽光にまつわるニュースは、これまで発電所の建設が中心でした。農地と太陽光を両立させる案件や、日系企業が参画する水上太陽光がその例です。

今回は性格が違います。発電するのではなく、発電に使う部材を作って国外へ売るという投資です。

発電所の投資今回の投資
収益の出どころフィリピン国内の電力販売米国・欧州への製品輸出
国内の電気代との関係売る側として関わる製造コストとして負担する側
立地の理由日射量、系統への接続人材、経済特区の制度、物流

つまり、フィリピンの高い電気代は今回の投資にとって追い風ではなく、乗り越えるべきコストにあたります。それでも立地が選ばれた理由は、同社が挙げる「成長する再生可能エネルギー部門への信頼と、技能のある労働力」にあります。

7月にPEZA登録、すでに操業

時系列を押さえておきます。

Philippine Aurion Solar Technologiesのフィリピン進出
  1. 2025年9月現地法人を設立

    フィリピンでの事業体を立ち上げる

  2. 2026年7月7日PEZAに輸出企業として登録

    Tereso Panga長官と同社社長が登録契約に署名

  3. 2026年9月工場の内容を公表

    FPIP内の1.3ヘクタールで操業していることが明らかに

PEZAおよび同社の公表にもとづく。

PEZA(フィリピン経済区庁)は、経済特区に入る企業を登録して税の優遇を与える政府機関です。輸出企業として登録すれば、生産したものを国外へ売ることを前提に優遇を受けられます。

雇用は 500人超の現地の専門職・技術者とされています。7月の登録時点では「400人超を採用・訓練済み、長期では約508人の直接雇用」と説明されていました。

同社社長のHuai Jin Yang氏は「フィリピンで最初の製造拠点をFPIPに構えられることをうれしく思う。この投資は、成長する再生可能エネルギー部門と技能のある労働力に対する私たちの信頼を表している」と述べています。

立地はロペス財閥と住友商事の工業団地

入居先の FPIPは、1996年にフィリピンのロペス財閥系 First Philippine Holdings と日本の 住友商事 が共同で開発した経済特区です。サントトマスの505ヘクタールに加え、タナウアンに75ヘクタールの拡張区域があります。

入居企業は150社を超え、航空宇宙のCollins Aerospace、村田製作所のフィリピン法人、Dysonなどが並びます。電子部品と精密機器の集積地にあたる場所です。

FPIP上級副社長のYutaro Kuryu氏は「フィリピンが再生可能エネルギーの製造拠点として育つなかで、Philippine Aurionが事業を立ち上げ広げていくのを支えられることをうれしく思う」としています。

日系企業にとっての読みどころは、この工業団地が太陽電池の部材メーカーを引き寄せ始めたという点です。同じ団地に入る企業からすれば、近隣に新しい業種が増えることは人材の取り合いにも供給網の広がりにもなります。

換算の基準は1ペソ2.49円(2026年9月4日時点)です。

SOURCES / 出典

  1. PhilSTARメディア
    Australian-backed firm invests P3.3 billion in Batangas solar cell plantphilstar.com
  2. BusinessMirrorメディア
    Batangas lands ₱3.34-B solar factorybusinessmirror.com.ph

参考(本文の補足)

  1. First Philippine Industrial ParkFirst Philippine Industrial Park

SHARE

#太陽電池#PEZA#バタンガス#FPIP#製造業#オーストラリア#輸出

同じカテゴリーのNews

RELATED

この動きを読み解くInsights

INSIGHTS

フィリピンの法人税ゼロは、もう大手日本企業の得になっていない

フィリピンの経済特区に入ると数年間は法人税がゼロになります。ところが日本は2024年4月から、税負担の軽い海外子会社の分を親会社に課税し始めました。フィリピンには自国で先に取る制度がないため、免除された分は日本に納めることになります。下院の調査によれば、売上上位1%の法人の実効税率の中央値は5〜6%しかありません。

市場分析

英語と安さで選ばれたフィリピンの画面に、世界の口座と診療記録が映っている

フィリピンのコールセンターが選ばれてきた理由は、英語が通じて安いことです。業界団体自身の資料がそう書いています。ところがそこに届いているのは、世界の銀行と医療のユーザーからの問い合わせでした。選ばれた理由と任されている中身が噛み合っていません。2年で2度、オーストラリア企業の顧客情報がマニラを経路に抜かれ、アナリストは「顧客はリスクを拠点の所在地で値付けする」と言います。

トレンド

フィリピンの電気代が東南アジアで一番高い、直撃するのは半導体と精密電子の工場

フィリピンの平均電力価格が2026年6月に1キロワット時12.43ペソとなり、シンガポールを抜いて東南アジアで最も高くなりました。この高さが最も重くのしかかる日系企業は、半導体と精密電子の製造業です。単価が原価に乗るうえ、停電が頻発する地域では自家発電を持たされ、製造コストがさらに上がります。しかも影響は、進出をやめた素材・部品産業という形でも現れています。