医療研究とバイオテクノロジーのスタートアップである、InterVenn Biosciences社が、合計40億円以上(20億ペソ)を調達し、躍進を遂げています。
その会社のトップは、フィリピン人のAldo Carrascoso。
Ateneo de Manila Universityを卒業し、アメリカのBabson大学のMBAを取得。ソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートされた彼は、現在卵巣がんの早期発見技術を発展させるために日々奮闘しています。
カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とする医療研究とバイオテクノロジーのスタートアップである彼の会社は、国際的に認められた医師、科学者、研究者を集めて、がんの発見と診断の分野におけるゲームチェンジャーとしか言いようのない技術を開発しています。
その画期的な技術に多くの注目が集まっています。同社はシリーズBの資金調達で3400万ドル(約16億4000万ペソ)を調達したことを発表し、精密医療のプラットフォームをさらに発展させ、商業的に利用できるようにするためにこの資金が使われます。このラウンドは、Anzu Partnersが主導し、Genoa Ventures、Amplify Partners、Xeraya CapitalとTrue VenturesやOjjeh Familyも出資。
2018年、InterVennは、True Ventures、Amplify Partners、Boost VC、Prado SV、Genoa Venturesから940万ドル(4億5,200万ペソ)の機関投資を受けました。合計すると、20億2,000万ペソ以上の資金調達を受けていることになります。
InterVennはどんな会社?
InterVennの事業には、すべての生物に存在するタンパク質の研究が含まれています。糖タンパク質は一種の「バイオマーカー(ある疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のこと。)」となっており、医師は糖タンパク質のデータをみた上で、その人が癌などの病気になりやすいかどうかを調べることができるといいます。
糖タンパク質については何年も前から知られていましたが、糖タンパク質の列を解析して生成された大量のデータは、解析に時間がかかることはもちろんのこと、実用的な洞察や解決策を提示すること非常に困難な分野でありました。Carrascoso氏は、「InterVennが行ったことは、通常であれば科学者が解読するのに12ヶ月もかかってしまうような膨大なデータを、12分(最終的には12秒)でふるいにかけることができるAIを開発することだ」と説明しました。
全体のプロセスにはもっと多くの詳細やニュアンスがありますが、本質的には、InterVennの技術により、医師は患者が特定のタイプのがんに罹患しているか、あるいは罹患するかを、かなり確実に見分けることができるようになりました。またこの技術は、患者にとって不要だと思われる治療を避けることにも役立つものになっています。
VOCAL(InterVenn Ovarian Cancer Liquid Biopsy)と呼ばれるその最初の研究は、卵巣がんの臨床的意思決定ツールです。簡単な血液検査により、医師は女性の骨盤の腫瘤を検査し、悪性の骨盤腫瘍と良性の骨盤腫瘍を見分けることができます。卵巣がんは一般的に後期の段階で発見されるということを考えると、これは卵巣がんとの闘いにおける大変重要な一歩です。初期段階で発見されると、患者さんの生存率が90%にまで上昇するというデータもあります。
Carrascoso氏の掲げるミッション
このInterVenn技術は、控えめに言っても世界を変えるものであり、Carrascoso氏にとっては個人的な宿命でもあります。彼の母親は1990年代に乳がんで亡くなり、最近ではいとこも同じ病気と診断され、今年2月に亡くなっています。
「InterVennは、間違いなく私の宿命です」と彼は語ります。
Carrascoso氏は、以前はソフトウェア・エンジニアだったでしたが、その後ビットコインや動画系のスタートアップを含む、少なくとも4つのベンチャー企業にも関わっていました。バイオテクノロジーとの関わりは、InterVennの共同創業者であるCarolyn Bertozzi博士とCarlito Lebrilla博士に出会ったことから始まりました。それぞれの分野で最も聡明な頭脳の持ち主で構成されたチームを編成したことで、今の目標は、彼らの一連の技術をテスト段階でさらに発展させ、最終的には商業的な利用が可能になるようにすること、彼は来年の早い段階でそれを実現したいと考えています。
同社は、卵巣がんに加えて、膵臓、肝臓、前立腺、喉、腎臓など、他の種類のがんの検出にも取り組んでいます。Carrascoso氏は、この技術の応用はCOVID-19との戦いにも広がるかもしれないと付け加えています。
フィリピン人が第一線で活躍
InterVennのもう一つの注目すべき点は、サンフランシスコに本社がある一方で、マニラにオフィスを構えていることです。数ヶ月前には10人のチームが、現在では約30人のスタッフをマニラ拠点に抱えています。これはCarrascoso氏が強調したいことです。
「AI技術のほとんどを自分たちで書いており、ソフトウェア開発は100%フィリピンで行われています。テクノロジーはフィリピン人から来ているということを、もっと色んな人に知ってもらいたいのです」と彼は言います。
InterVennでは現在、VOCAL試験の国際臨床試験に参加する患者を募集しています。国内での臨床試験は、フィリピン総合病院、国立腎臓移植研究所、メディカルシティで実施されています。
【参考】
esquiremag.ph