情報の発展は、フィリピンのような新興国を含めあらゆる市場の金融環境にも大きな影響を与えます。
昨今の金融分野におけるイノベーションの一つに、クラウドファンディングと呼ばれる方法があり、ユーザーが金銭的支援を簡単にできるような世の中になりました。
クラウドファンディングは(1)プロジェクトの実行者(2)支援者(3)実行者と支援者を結びつけるオンラインプラットフォームの3者で構成されています。
フィリピンでは、融資形式、株式形式、報酬形式、寄付形式など、様々な形のクラウドファンディング活動が認知され始めています。
今回はそんなフィリピンで最も使われているクラウドファンディングプラットフォームを6つ紹介します!それでは始めていきましょう!
CROPITAL
CROPITALは融資形式と株式形式を掛け合わせたクラウドファンディングプラットフォームです。
通常の金融機関(銀行など)から個人的に融資を受けるのではなく、支援者がプロジェクトの実行者にお金を貸し、実行者から一定期間に利子を付けて返済する約束を受けるのが融資型クラウドファンディングです。一方、実行者が売却した株式に支援者が投資し、発起人が利益の一部を受け取るのが株式型クラウドファンディングです。
この2つの資金調達方法は異なりますが、主に事業資金の調達に資金援助を必要とする中小企業を対象としています。
CROPITALは、そんな融資型と株式型を掛け合わせた、農業系に特化したプラットフォームです。
フィリピンは農業大国であり、土地面積の約42%が米、トウモロコシ、ココナッツ、サトウキビなどの作物の栽培に使われています。
CROPITALは農業経営者の活動資金を支援するだけでなく、支援者がオンラインでの収入を得るための手段としても活用されています。
支援者が行った投資に対して5%のサービス料を請求し、寄付された純資金は直接農家に送られます。収穫が終わり、すべての作物が販売されると、支援者は農場の利益から一定の割合で収入を得ることができるといった仕組みとなっています。
The Spark Project
The Spark Projectは、フィリピンのアーティストたちの間で話題となっているクラウドファンディングプラットフォームです。
クリエイティブに特化したプロジェクトが多いのが特徴です。
プロジェクトの実行者は、目標が達成されなかった場合は総額の15%、達成された場合は10%という手数料をプラットフォームに支払うという仕組みになっている為、実行者は目標金額を達成する為に自分自身でも広報活動をしっかりと行わなければいけません。
フィリピン人アスリートのための最初のポッドキャストはThe Spark Projectから生まれました。
Indiegogo
The Spark Projectと同様に、Indiegogoも起業家が日常的な問題を解決するための画期的なプロダクトを開発するためのプラットフォームとしてスタートしました。
昨年2019年に10年の節目を迎えてからは、コミュニティプロジェクトを含むより多くのカテゴリーをもつプラットフォームになりました。
フィリピンでは、Bayanihan FundやThe Bells of Balangiga等のようなコミュニティプロジェクトのためにIndiegogoが利用されることが多いですが、世界的にみると、Indiegogoはプロダクト開発系のプロジェクトが多く、「テック」「イノベーション」「クリエイティブ」といったカテゴリの色が濃いプラットフォームとなっています。
Gava
フィリピンで最も有名なクラウドファンディングの形式となっているのが、寄付型のクラウドファンディングです。
世界銀行によるとフィリピンの貧困率はいまだ19.8%となっています。Gavaのプロジェクトは支援者が資金を送金して慈善事業を支援するものが大多数を占めています。
社会的・慈善活動のためのプラットフォームとして知られており、動物の世話からリハビリテーション、災害資金など多岐にわたるプロジェクトが開始されています。
クレジットカード決済からオンラインバンキング、店頭での支払いまで、様々な支払い方法が用意されており、プロジェクトの実行者は5%のみのプラットフォーム手数料で資金を引き出すことができます。
Virlanie FoundationやChildren of Asiaなどの非営利団体は、Gavaを通じて資金提供を受けています。
GoGetFunding
GoGetFundingは、結婚式、ハネムーン、スポーツなどのユニークなプロジェクトを含む、様々なカテゴリーのプロジェクトを作成することができるプラットフォームです。
カテゴリーの種類には柔軟性がありますが、支援者はPayPalのような支払い方法でしか資金を送ることができず、2.9%の手数料がかかる仕組みとなっています。。
しかし、Eduardo Ramos、Tatiana FermoやAden Rayのプロジェクトのように、いつでも資金を引き出すことができるオプションを提供することで、プロジェクトの実行者に直接資金が届くという保証を行なっています。
Airfunding
Airfundingのプロジェクト実行者とサポーターの関係は、発起人が支援金を送った時点で終了する形ではなく、共通の目標や夢を持ちそれを達成するために一緒に行動する人たちのためのオンラインコミュニティです。
医療支援から家族のプロジェクト、災害資金から世界旅行まで、プロジェクトを立ち上げた人は、国内外問わずコミュニティ内の方々から支援を受けることができます。
優しいフィリピン人にとって、共通の目標のために団結することは大切にしている哲学の一つといえます。
Dhalia Torremoro氏が行ったようなプロジェクトがとてもいい例になります。
数十年前までは、フィリピンでの「援助」といえば、宗教団体や非営利団体、慈善財団などに限られており、富裕層が恵まれない人に寄付をするという習慣がありました。
今ではクラウドファンディングのプラットフォームを利用できるようになったことで、対等の関係性から資金調達ネットワークを通じて仲間を助けることができるようになり、「援助」における新たな一歩を踏み出したと言えます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
日本でのクラウドファンディングプラットフォームは「挑戦のハードルを下げる」というイメージがありますが、フィリピンでは、依然大きな社会問題となっている「貧困」や「格差」の解決に重きを置くプラットフォームが多いことがわかりました。
東日本大震災が起こった時期、「支援から交流へ」というフレーズを耳にしたことがあります。
支援という行為はクラウドファンディングも含め偽善だとか毛嫌いされがちではありますが、支援者が支援をするという感覚ではなく「やりたいからやっている」という動機は誰にも否定できません。
最後に紹介したAirfundingのように実行者と支援者とを区別するのではなく、目的を達成するための仲間というイメージを皆んなが持つようになれば、助け合いのハードルやイメージも変わっていくのだと思います。
今回は以上です!ありがとうございました。