AXN(テレビ)とGo Daddy(ドメインレジストラ・レンタルサーバサービス)が共同主催しているスタートアップ番組「Project Go」のデビューシーズンが放映されました。
「Project Go」では、フィリピンのスタートアップがメンターの前でピッチを行い、フィードバックをもらったり、評価が高ければ投資を受けることができるといった内容の番組となっています。
小さな課題からコロナ関連の世界的な問題まで、フィリピンの意欲的な起業家たちは課題を解決し、夢を現実のものにするために全力を尽くしています。
そこで注目を集めた人が、25歳の女性のPearl Janine De Guzman。Guzman。Go Daddyの審査員への最終プレゼンを成功させ、最優秀賞を獲得し、100万ペソの賞金を手にしました。YouTubeで視聴できるこの番組は、スタートアップを拡大するための投資を勝ち取る機会として、多くの若手起業家が集まりました。
Guzmanは、番組に出演した若手起業家の中で際立った存在でした。彼女が立ち上げたスタートアップであるStaffzは、機会が恵まれない若者により良い人生のチャンスを与えるという社会的使命に根ざしたオンライン・アウトソーシングサービス(主にライティング、グラフィックデザイン、SEO外部施策)です。
Staffzはフィリピン人フリーランサーに、アメリカの中小企業でのパートタイムとフルタイムの機会を提供しています。
原動力は社会を変えるという強い意志
Staffzはまだ2年しか経っていませんが、すでに世界有数のウェブホストであるGoDaddyから100万ペソ(約200万円)の投資を受けています。
Staffzのアイデアは、Guzmanがまだ大学で学生ボランティアをしていた頃に生まれ、貧困の中で生まれた子供たちが社会構造上さまざまな制限を受けているということを痛感したことから始まります。
「貧困の中で生まれた子どもたちの環境や文化が、彼らの夢の実現を大きく妨げているのではないかと思うと、心が折れそうになりました。教育はが誰にでも与えられた特権ではないことは事実ですが、彼らのコミュニティは教育を受けようと努力することも諦めているような雰囲気を出していました」とGuzmanは語ります。
彼女は、自信のボランティア活動の根本に疑問抱き、「なぜ私たちは、彼らが自分の力で何か行動を起こすことを祈ってボランティアをして励ましているだけなのだろう?」と考えるようになりました。
彼らの幸せを祈っている、しかし、行動なしには何も変えることができない。そうして2020年、明確な目標と情熱を掲げた現在のStaffzが誕生しました。
Staffzのアイデアは以前からのGuzmanの頭の中にありましたが、2020年は地に足をつけるための完璧なタイミングであると確信していました。在宅ワークが一般的になり、オンラインの環境へ人々が移行したことは、Staffzを立ち上げるには最高のタイミングであり、ピンチとチャンスは表裏一体であるということを証明しました。
Project Goで若手のルーキーが大躍進
Project Goのデビューシーズンには、大学在学中の若い起業家たちも参加しました。ファイナリストの中には、20代前半で学士号を取得したばかりの人もいました。
経験豊富なスタートアップのベテランがステージに立つのを見慣れている人にとっては、歓迎すべき変化でしたでした。Project Goは誰でも参加が可能なのですが、今回の参加者の若さには、運営側も驚きを隠せませんでした。
Guzmanもその1人で、同い年の2人の同僚と一緒に、3人のチームでStaffzを運営しています。
100万ペソの投資を受けたStaffz
GoDaddyからの投資によりにより100万ペソを獲得したStaffz。
資金は、「より多くの人を雇うこと、より多くのフリーランサーとつながること、サービスを向上させるために必要なツールや設備を整える」ことに使われます。規模の拡大に向けての準備を進めます。
現在、Staffzはクライアントに対して、SEO、グラフィックデザイン、コンテンツライティングなど、売上やトラフィックを伸ばしたいオンラインビジネスに欠かせないサービスを提供しています。Staffzがサービスを提供している中小企業は、フィリピンの比較的安価な人材と、フリーランサーの生活に目に見える影響を与える機会に惹かれてサービスを利用しています。
他のオフショアのアウトソーシングとは異なり、Staffzは本当に機会を欲しているフリーランサーに焦点を当てています。Staffzでは、フリーランサーが正規雇用のチャンスを掴むまで、実践的なトレーニングやスキルアップのためのワークショップ、パソコンやポケットWiFiを提供しています。
社会的インパクトが利益と同じくらい重要であることは明らかであり、コロナとの戦いには民間企業の力が多いに必要であるため、そこで共感を生んだStaffzが最優秀賞を受賞しました。
「採用条件は厳しく、面接を受けることすら難しい状況な上に、コロナの影響で多くの企業が人員削減を行っているため、求職者が内定することは困難になっています。さらに、必要な資格(大学教育、経験年数、スキルなど)を持っていない求職者は、市場の中でも一番下の立場におり、仕事につける可能性がかなり低くなっています」とGuzmanさんは述べています。
これこそが、Staffzが解決しようとしている問題です。
Staffzでは、クオリティのチェックだけでなくフリーランスの若者を指導するメンターがつくことで品質管理を徹底し、アメリカの中小企業のアウトソース先として信頼を勝ち取っています。
Staffzはまだ初期段階にあるので、この後ビジネスが軌道に乗るかどうかに関しては何とも言えない部分もあります。しかし、一つだけはっきりしていることは、社会的課題を解決しようとする若者の起業家精神が台頭しつつあり、それはフィリピンのスタートアップの未来に大きな意味を持つこととなるでしょう。
【参考】
esquiremag.ph