クリーンな政治、強力なリーダーシップ、インフラ政策への取り組みにより、フィリピンは急速な成長を遂げてきました。
しかし、他国の成長経済と同様、成長を阻害する社会問題(貧困、不平等、失業など)に本格的に取り組む必要があります。
フィリピンは英語が堪能な若い労働力を抱えており、海外からの送金額も高く、家庭が抱える負債はアジアで最も低い水準にあるため、将来的にはかなり有望と言えます。
21世紀までは平凡なペースで成長してきたフィリピン経済ですが、この20年間で大幅な成長を遂げています。
2001年から2009年までの年間平均成長率は4.6%で、2010年から2019年の間には6.4%まで急上昇しました。
これにより、2018年の一人当たり国民総所得が3,830ドルの「下位中所得国」から、目標であった一人当たり国民総所得が3,956ドルから12,235ドルの間の「上位中所得国」へとランクを上げることに成功しました。
景気が良くなるにつれ、貧困も同様に減少してきました。実質賃金の上昇に伴い、貧困は2015年の23.3%から2018年には16.6%と3年で大幅に減少しています。
フィリピン・GDPの構成
国内総生産(GDP)の構成は、農業部門、製造業部門、サービス部門の大きく3つに分けられます。
2018年のGDPに占める農業の割合は約9.3%で、農業部門はフィリピンで史上最低のGDPへの寄与度を記録しました。(1980年代には農業がGDPの4分の1、1970年代には3分の1近くを占めていました。)
一方、製造業部門は約30.7%、サービス部門は約60%を占めています。
農業
フィリピンは、農業中心の経済から製造業・サービス業中心の経済へと徐々に移行してきました。
1980年には国内総生産(GDP)に占める農業の割合は約4分の1でしたが、年々減少し、現在では9.3%にまで減少しています。
農業部門には、林業、狩猟、漁業、作物の栽培、畜産が含まれていて、労働力の約25%を占めています。
主な農産物は、サトウキビ、ココナッツ、米、トウモロコシ、バナナ、キャッサバ(マニオク)、タピオカ、パイナップル、マンゴー、豚肉、卵、牛肉、魚類です。
フィリピンの農業部門の生産性の低さと成長の遅さは、貧困を生み出す結果となっています。
幸いなことに、政府は現在、農業に多額の投資を行っており、状況は変わりつつあるようです。
政府は、食糧安全保障、農村所得、インフラを改善する試みとして、農業省(DA)のプログラムを支援しています。
製品を安価にし、人件費を安定化させるための取り組みとして、農業機械化、有機農業、農薬の開発などがあります。
また、世界銀行が支援するフィリピン農村開発プロジェクトは、農村インフラの改善を目的としています。
これらの施策により、フィリピンの農業部門は近い将来、生産性と生産量が飛躍的に向上することが期待されています。
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製造業
製造業部門は長年にわたりフィリピンのGDPに持続的に貢献しており、1980年から2014年の間は平均34%でしたが、2018年には30.8%にまで低下しています。
この部門はフィリピンの労働力の18.39%を占めています。
フィリピン政府は、インフラを改善することで、外国からの投資を誘致する努力をしています。また、経済圏を整備しており、多くの外資系企業を誘致しています。
一部の企業は、従来の拠点である中国から、フィリピンや東南アジアの近隣諸国に生産拠点を移すと予測されているとの報道もあります。
この流れは、今後の産業部門の成長を維持するのに貢献することになりそうです。
製造業では、鉱業・鉱物加工、医薬品、造船、電子機器、半導体などが中心となっています。
フィリピンはアジア太平洋地域で最も魅力的な医薬品市場の一つです。
また、フィリピンは金属資源に恵まれており、多くの外資系企業が進出しています。BHPや住友金属鉱山などがその一例です。
また、外国企業の参入により、造船業のポテンシャルが活かされています。フィリピンは中国、韓国、日本に次ぐ第4位の海運大国です。
サービス業
フィリピンのサービス部門は、1980年代前半にGDPへの寄与度で製造業部門を抜き、1980年の36%から現在では60%に増加しています。
現在、サービス業はフィリピンの労働力の56.7%を雇用しており、これは農業部門と製造業部門を合わせた数字を上回っています。
サービス産業の中では、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)が産業の成長に大きな役割を果たしています。
2番目に重要なセグメントは観光業で、長い間緩やかな成長を続けてきた歴史があります。
フィリピンの観光産業は、持っている手札を最適に活用することができていなく、海外からの観光客の誘致において、シンガポール、インドネシア、タイなどの国の観光産業に遅れをとっています。
その主な理由としては、インフラの未整備(空港、鉄道や道路感ん今日の悪さ等)、サービスのクオリティや施設の不備が挙げられます。
もう一つのセグメントは海外労働者、いわゆる出稼ぎであり、これには永住、一時、非正規の移民として国外で働くフィリピン人が提供するサービスが含まれています。
海外で働くフィリピン人の送金額は年々大幅に増加しています。彼らの仕事も、低賃金のサービス業から、より高度な教育スキルを必要とする専門的な仕事へと構造的に変化しています。
海外からの送金は、2018年の総GDPに占める割合が10.2%と好調を維持しています。2000年には8.5%、1990年には3.3%、1980年には1.93%でした。
そして、これから
経済が飛躍的に発展するためには、農業、製造業、サービス業の3つの主要な部門のバランスのとれた成長が不可欠です。
何十年もの間、フィリピンは経済的・社会的発展の面で、より豊かな東南アジアや東アジアの国々に遅れをとってきました。
しかし、そのような時代はもう終わりました。現在、フィリピンは成長と持続可能性の道をしっかりと歩んでいるように見えます。
現在コロナショックの影響で経済も停滞している状況ですが、これからもフィリピンの経済発展に目が離せません。
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【参考】
investopedia.com