「2020 Philippine Startup Survey」によると、調査に協力した投資家のうち73%が、今後3年の間にフィリピンのスタートアップに最大500万ドルを投資する予定だと回答しました。
スタートアップ情報や、資金調達の情報があまり多くは流れていないフィリピンのマーケットではありますが、今後はスタートアップ界隈がさらに盛り上がることになるでしょう。
直近の過去3年間との比較
ここ3年で、フィリピンのスタートアップのエコシステムは大きな変化を遂げています。
Innovative Startup Act法やその他のレギュレーションの改正により、政府が積極的に起業を促進するような流れが生まれています。
KKRやTencent、Ant Financialなどのグローバル企業からのフィリピンのスタートアップ企業への投資は、フィリピンには有望で強力なスタートアップエコシステムがあることを証明しています。
スタートアップ企業の創業者たちに聞くと、その大半は事業を順調に成長させており、収益成長の見通しにも自信を持っています。加えて、今後数年間での新たな国/地域への進出も計画しています。
同様に、ベンチャー投資家も、フィリピンの新興企業の成長の見通しに自信を持っていて、Fintech、eコマース、医療・ヘルスケア分野にもっとも期待を寄せています。
今年は、洗練されたプロダクトやビジネスモデルを持つスタートアップが大半を占めていて、2017年の同調査では比較にならないくらいの確立されたビジネスが多く見られます。
2017年の頃は、そもそもの問題で国の規制や経済状況、ビジネスを取り巻く環境がスタートアップの課題の1つでした。
2020年では、そのような根本的な課題は緩和されてきており、持続可能なビジネスを作るために、マーケットリッサーチや優秀な人材獲得のために多くの労力をかけることが出来ているという状況になってきました。
2017年には、起業家が持つべきスキルのトップとしてソフトウェア開発スキルが挙げられていたのに対し、2020年には1位に起業家精神、2位にプロジェクト管理スキル、次いで営業スキルがラインクインしています。
人々の価値観/マインドの部分も3年前と比べると多く変わったと見受けられます。
資金調達事情
資金調達は起業家にとって重要な優先事項の1つですが、48%が潜在パートナーや投資家から手を引いたり、既存のパートナーシップを解消したりしている状況となっています。
理由を尋ねたところ、ビジョンに共感しきれていないことが第一の理由として挙げられ、次いで経営陣との性格面でのミスマッチ、経営陣の弱体化、牽引力の欠如が理由として挙げられました。
2019年に開示された資金調達案件は、Coins.phへのgojekの7,200万ドルの投資や、Voyager InnovationsへのKKRとTencentの1億7,500万ドルの投資などがありました。
今回の調査に参加した投資家によると、65%がフィリピンのスタートアップに投資したことがあり、100万ドルから500万ドルの間での投資をしたことがあると回答した人がかなりの数に上っています。
これからのスタートアップ市場
フィリピンでのスタートアップマーケットは、他の東南アジア諸国に比べてまだ遅れているものの、国内外の投資家の中にはフィリピンへの資本投下に関心を示す人/企業が増えています。フィリピンの若い人口、中間層の増加、スマートフォンの普及率の向上、改革の進展などが、投資家を現地のスタートアップエコシステムに誘導する要因となっています。
注目すべきは、より多くの現地企業が正式に独自のベンチャーキャピタルを設立し始めたことです。2019年には、
Ayala Corporation、JG Summit、Aboitiz Equity Venturesなどのトップコングロマリット企業が、国内外のスタートアップに投資するというビジョンを掲げて、コーポレートVCを立ち上げました。
フィリピンでベンチャー企業が増加している中で、投資家は独自性/競争力のある製品やソリューションを持つ投資先を探しています。
これからさらに面白くなりそうなフィリピンのスタートアップ事情。今後も注目していきたいと思います。